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スピカと出会ったのは,まだ僕たちが純血もマグルも何もよくわからない時だった。

兄のシリウスとグリモールド・プレイスの近くの公園で遊んでいたとき,偶々出会ったのが彼女だった。

その頃の僕らは公園に毎日のように通い,毎日のように遊んでいた…らしい。

僕は幼すぎてその頃のことはよく覚えていない。

僕たちはいつの間にか公園で遊ばなくなった。

母上が魔法界のことを話始めた頃だったかもしれない。
純血のこと。マグルのこと。

兄さんは母上の話を聞いて曖昧に頷いていた。後で僕に
「よくわかんないけど…マグルだって魔法族だって おなじ人間だろ。じゅんけつしゅぎ なんて,ばからしいよな。レギュだってそう思うだろ?」
そう耳打ちした。

…魔法族のじゅんけつをまもらなければならない…
兄さんはどうしてそれがわからないんですか?ブラックという高尚な家の長男である貴方がどうしてそれをわからないんですか…!?

その時の僕は淡い恋心を抱いていた小さな女の子のことなんて忘れていた。

純血主義なんて俺にはわからない。母上に初めて兄が反発した時だった。

どうしてわからないの!?シリウス!!!シリウス!!!母上は狂ったようにに叫んだ。

レギュラスはちゃんとわかってくれるわよね…?このブラック家の血の高尚さが!純血主義の正しさが!!

レギュラスはホグワーツに入ったらスリザリンに入るのよ…?
あんなお兄ちゃんみたいになったら駄目!!!

母上はヒステリーを起こすようになった。純血主義をヒステリック叫ぶようになった。

それは兄がホグワーツ入学してグリフィンドールに入りさらにひどくなった。壊れていく母上を僕は見ていられなかった―


―僕がホグワーツに入学した時,組分け帽子が言った。

「ブラック家の子だな?………スリザリン!と直ぐに言いたいところだが,しかし君は勇気に満ちている。君のお兄さんと同じようにー」

「…スリザリンに入れてください…!!スリザリンに…!スリザリンに…!!」

「いいのかね?君には知性も才能もある!他の寮に入れる可能性も充分ある。」

「…スリザリンに入れてください…!」

「そうかね…では…スリザリン!!」


こうして僕はスリザリンの寮に入った。グリフィンドールの机で兄が苦虫を噛み潰したような顔をするのを見た―。

スピカと再会するのはその後の話だ。


―魔法族の血をマグルの血で穢してはいけない。僕たちは純血であり,マグル生まれの魔法族より優れている。マグル生まれを排除し,魔法族の高潔な純血を守れば,魔法界はより豊かなものになる。―そう思っていた。あの方ならそういう世界を作ってくれる,そう信じていた。

でも―…スピカが傷つき血を流している所を見た。クリーチャーがボロボロ(クリーチャーはもともとみすぼらしい枕カバーを着ているけどそういう意味じゃない)になって帰ってきた。僕の望んだ世界はこうだったか。思い描いた世界はこういう世界だったのか。僕の何かが壊れた―…


クリーチャーの話を聞いて,闇の帝王が何をしようとしているか…考え,調べ,…そして辿り着いた…彼のアキレスも試したという,最大の禁忌―…魂の分断だ。きっとクリーチャーが水盆にいれたロケットが,闇の帝王のアキレス腱だ。そのロケットを壊せば闇の帝王はきっと―…。
クリーチャーはきっと,僕の命令通り,ロケットを壊すことだろう。

僕が守りたかったのは"家"だった。それは,屋敷のことじゃない。ブラック家の血でもない。もちろんそれらも大切ではあったけれど。

僕が言いたい"家"というのは,僕の居場所のことだ。帰るべきもののことだ。家族や友人,大切な人たちが僕の帰るべき居場所だった。

兄さんが僕の"家"を壊した。でも,兄さんも僕が守りたかった"家"の一つだった。

僕が望んだのは,父上と母上 クリーチャー
兄さん スピカ 僕の大切な人たちがが笑っている そんな世界だった それだけで何もいらなかった。

それはもう―叶うことはないけれど。

to be continued.

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