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「ふーん。そんなこと言ってる人間もいるのね。」
まだ居たのか。カペラ・ブラウン。
「…。」
「…レギュは…私のことを思って…そう…してくれたのかもしれない…。でも…」
でもね
「私が傷つくかどうかは私が決めるの。
…他の知らないひとに悪口言われるよりも,レギュラスと話せないことのほうが何倍もつらいよ…!」
「どうして…」
「どうしてって…
私もレギュが…
レギュラスのことが好きだからだよ!!
」
…さっきからずっと我慢してた,涙が止まらなかった。
「…でも,スピカは兄さんと付き合っているんじゃ…」
「…なに…ソレ…?」
「噂,よ。」
カペラがここで口を挟む。ていうか,あんたは顔を拭きなさい,とハンカチをスピカに差し出す。
「あんたはシリウスとスピカが付き合ってるっていう噂を信じて身を引こうとしたんでしょ。」
「…そう…なの?」
「じゃあ,スピカと兄さんは付き合ってないんですね…。」
自分の恋敵の兄と好きな人が付き合ってないというのにレギュラスブラックは全く嬉しそうじゃなかった。ここは普通喜ぶところじゃないの??
それどころか,すごくレギュはすごくすごく苦しそうだった。
「両想いなんだからもっと嬉しそうにしなさいよ。」
「…駄目です。グリフィンドール生とスリザリン生が恋仲なんて聞いたことありません。」
「…そんなの関係ないよ!」
「…また,虐めにあいますよ。」
「…そんなの…!」
「…僕が嫌なんです。僕の所為でスピカが傷つくのは。」
「…っ」
ずっとずっと
振り払えなかった,
その目で
スピカは僕を見る。
…狡い。
……………
「…分かりました。僕の敗けです。」
不安そうな,今にも泣き崩れそうだったスピカの顔がパァッと明るくなった。本当にコロコロと表情の変わるスピカに僕は不覚にも微笑(わら)ってしまった。
「ただし,僕とスピカが付き合ってることは,誰にも内緒にしてください。絶対に他言しないでください。」
「もちろん貴女も…―って。」
カペラ・ブラウンにも口止めしようと振り替えると
もうそこに彼女の姿はなかった。
「カペラならいつの間にか空気読んでどこか行っちゃった。」
「…そうですか。」
だったらもう少し早く帰って欲しかったですけどね。
「カペラなら大丈夫だよ。ぶっきらぼうだけど根はいいコだもん。」
いつの間に仲良くなったんですか…と僕は呆れて呟いた。
「ん?」
「なんでもないです。」
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