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「あと…私,好きなひとがいる…。」
目にじわりと涙が浮かんだ。
「…なんつー顔してんだよっ。」
私を元気づけるようにシリウスは頭を小突いた。
「俺は笑ってるスピカが好きなんだよ。だからそんなカオすんな。」
下げていた頭を上げると,屈託のない笑顔のシリウスが居た。
本当に泣きたいのはシリウスなのに―
…―と思うとまた涙が込み上げてきた。
シリウスが私の頭をポンポン叩く。
止めたいのに涙が止まらない。
「…っごめん…。…っ」
ごめん。
泣きたいのはシリウスなのに私が泣いちゃって…ごめんなさい。そう言いたいのに。涙につまって言葉が出てこない。
「あーもう!いいから。とりあえず笑え!これだと俺が泣かせてるみたいだろ!」
「…―うん。」
私は,なんとか涙を拭って(それでも涙は止まらなかったけど)シリウスに笑いかけた。
「ほら,ハンカチ。」
シリウスが差し出したハンカチを,ありがとうと受け取った。ちーんと鼻までかもうとしたら,鼻はかむなよ,と釘を刺された。
「…スピカ。俺に悪いと思ってんならな。」
「…―うん。」
「レギュラスにちゃんと好きだって言えよ。」
「………―うん?」
さっきまで止まらなかったはずの涙が,ヒュイン,と引っ込んだ。
ヒュイン。
「……ちょっと待った!私,レギュラスが好きだとか一言も―…」
これっぽっちも言った覚えないんだけど。…だけど…なんでぇ?
「や,あれで,気づかないとか。可笑しいだろ。スピカ分かりやすすぎ。まぁ俺がスピカのことよく見てるってのもあるけど…」
は,え,嘘,私ってそんなに分かりやすいの??え,もしかして,レギュラスも知っ…
「気づいてないの,レギュラス本人くらいじゃねぇの?割りとニブイからな。…小さい頃から。」
シリウスの言葉を聞いて私は,ほっと安堵し―…ってちょっと待って,でも私の気持ちが周りにバレバレなのは変わらない訳で…
泣き止んだ私を見てシリウスは
「…ちょっとは落ち着いたか?じゃあ俺先寮戻ってるわ。」ハンカチ洗って返せよ,なんて言い残して,行ってしまった。
ちょっと待って。…全っ然,落ち着いてない。…落ち着いてないよむしろ大混乱だよ?これ。
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