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大好きだった―
その思いは
すぐには消えないけど―
5.失恋日和
I am disappoioted in love today.
図書館の空間が好きだ。紙の匂いも,紙が擦れる音も聞こえるくらいの静けさも。
だから僕はそこに通うのが当たり前になっていた。今日も図書館に行こうとしていつも通る廊下を歩いていた。
「お前が好きだから!……」
廊下に声が響き渡った。
それは紛れもなく自分の兄の声だった。こんなところでなにやってんだあの人は。只でさえ目立つのに大声を出して悪目立ちするのは止めて欲しい。そう思いながら頭を抱えた。
声がした方を横目で見ると―
そこには―
兄とスピカの姿があった。
―あ れ?
あれ?俺?今何つった!?
オマエガスキダカラ
―何告白してんだ俺ー!?
はっと,我に返ると俺の目の前できょとん,と,しているスピカが居た。きょとん,と言うよりもぽかーんという言葉の方がしっくりくるかもしれない。
どうやら,二人とも暫く石化していたらしい。
「ちょ,スピカ,ちょっと,こっち来い」
俺は未だに石化しているスピカをずるずると引きずった。
とりあえず,あまり人気がなさそうなところまで来たところで―…俺はスピカと向き合った。
「スピカ?おーい。聞こえてるか…?」
そう言った後,石化がとけたスピカは顔を真っ赤にして「は」とか「え?」とか,「う」とか言っていて,なんというか…,そう,かなりテンパっている様子だった。
なにか,言葉にしたいけど,何も言えない,そんな感じで,金魚みたいに口をぱくぱくさせていた。
「―う…え?…うそ…だって…!今まで―そんなこと…―ひとことも―…」
「……わりぃーな。…びっくりさせて。でも嘘じゃないから。」
俺は改めてスピカに向き直った。
「スピカが好きだ。」
声が震える。
二人は一瞬,時が止まったように―沈黙した。
「や,付き合おうとか返事とかそういうのは,いいから―」
沈黙に耐えられなくて,
俺はこう切り出した…否,切り出すつもりだった。
「ごめん!」
まだ「や,付き」までしか言ってねーよ。最後まで言わせろっつーか,聞けっつーの。
「私,シリウスの気持ちに全然気づいてなかった!…ごめん…。」頭を下げたスピカは今にも泣きだしそうだった。
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