07 「…ん、あぁ朝か」 まぁ眠れた方かな…時計を見ると針は6時を指している。連絡は8時だったから暇になるかな… 隣のクラピカとレオリオはまだ寝ているらしい。 「あれ、緋の目…だよね。」 手を血が滲むほどに握ったとき、クラピカの目が緋色に変わったのだ。世界七大美色に入っているくらいしか知らないがそんな大仰な名前がついている目を持っているのだからきっとクラピカはそれ関係で苦労したのかもしれない。私のように。 「ほっとけない、のかな」 この気持ちはきっと同情なんだろう…思わずため息が出る。これは私の予想でしかないのに。 さて、と。 「血の臭いはこれか。」 「…アル。」 「これやったの、キルアでしょ。」 「幻滅した?」 「いーや、むしろ納得したね。」 バラバラになった死体を見てるとキルアが近付いてきた。これは流石に声を出す前に即死だし、そんなことできるのはヒソカかキルアだと思ったのよね。 「ほんとすごい手捌き…流石プロ。」 「思わず…さ。俺ってやっぱ殺し屋にしかなれないのかな」 「キルアは殺し屋以外のことしたい?」 「そりゃもちろん。だからお袋と兄貴刺して家出してきたんだよねー。まぁ無事だろうけどさ」 「なら、キルアがやりたいことをやればいいさ。そこまでやったなら貫き通せや。なんなら私も協力するし。」 キルア、君は自由であるべきだ。キルアだけじゃない、人は誰だって自由なはずなのに。 「ん、サンキュー。」 ひらひらと手を振るとゴンを探しに行く、と言い残してキルアはどこかに行ってしまった。 「試験内容は生きて下まで降りてくること。制限時間は72時間です。」 飛行船はトリックタワーのてっぺんに私たち受験生を下ろすとそのままどこかに飛んでいってしまった。 「側面は窓ひとつ無いただの壁だねぇ」 「…だな。ここから降りるのは自殺行為だな。」 「普通の人間ならな。」 彼は一流のロッククライマーらしく、あっという間に姿が小さくなっている。クラピカとレオリオとで眺めていると何かの声がしてきた。あー…これって… 「…あの人ダメだ。」 「え、なんでだよ?あの調子なら滑って落ちるわけなさそうじゃねーか。」 「いや、そうじゃなくて。あれ。」 指をさした先にいるのは怪鳥たち。手足を使っている以上、実質は無防備なのだ。 『食いもんだ。なかなかうまそうだな。』 『脂がねぇなぁ。食えることに越したことは無いがな。』 人間ではない血が流れているせいか、怪鳥の言葉が私には嫌でも分かる。喋りながら人間を食う怪鳥と断末魔を上げる人間という凄惨な光景を見てるのはきっと私だけだろう。 う、とクラピカとレオリオは顔を歪めて顔を反らしたのを横目に捉えた。外壁をつたおうとすればあいつらに狙い打ち、なら抜け道がどこかにあるはずだ、クラピカがそう見当をつけると辺りを見回し始めた。 「ここを降りるのは普通の人間じゃ無理…か。確かにねぇ」 なんの皮肉だよ全く。…とりあえず人が少なくなるのを待つかな。 「こことここ。あとこっちに3つ。」 「隠し扉が5つか…」 「恐らくこのうちのいくつかは罠だろうな。」 こんな感じでみんなここから脱出したんだろうなぁ。人も減ったしそろそろ頃合いかな。 とりあえず全員ひとつずつ扉を選ぶことにしたらしい。私が選んだのが罠であればいいんだけど… 「1、2の3で全員行こうぜ。」 「了解。ここでいったんお別れかー。みんな頑張ってよ!」 「もちろん!いくよ。1、」 「2の」 「3!!」 掛け声と同時に消える4つの姿を見届けてひと安心。みんなと同じ道を通らないのは残念だけど、こっちのが私としては効率がいいんだよねー! 「さぁて、私も下に降りますか。」 残り少ない受験生の目を見計らってそのままてっぺんから地上めがけて飛び降りる。 普通の人間じゃ無理な芸当をやってのけることができるのは、 「私がただの人間じゃないってこと。」 一瞬だけ炎に包まれた直後に広がる青空。腕の代わりに金色の翼を動かしながらトリックタワーを眺める。ざっと見て残ってるのは10人強、ってとこかな。 「な、なんだあの鳥!!」 「あんなの見たことねぇよ!俺たちも食われるのか?!」 食われる心配するならさっさと抜け道を探せばいいものを… 『なんだお前。ここは俺たちの縄張りだぞ。』 『そうだそうだ。食われたいのかぁ?』 「ほぉ…?食われたいのはお前らかと思ったが?」 焼き鳥も悪くない、と嘴から炎をちらつかせると怪鳥たちはあっさり引いた。命あっても物種だもんね。 この姿…不死鳥の姿なら、あっという間にタワーの下まで降りてこられる。ただこの姿は私が不死鳥の血を継ぐことを知らしめる証でもある以上、 あまり人目につきたくない。 ばさばさと翼を動かすとすぐにタワーの根本が近くに見えた。 ← ×
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