05 二次試験後半の料理審査、合格者は私だけらしい。私だってクラピカのヒントがなければ不合格だったんだけどね… 逆ギレした受験者をブハラさんの張り手で吹き飛ばしたからある程度静かになったと思ったら次は何かが飛んでくる音が聞こえてくる。 「それにしても、合格者が一人とはちとキビシすぎやせんか?」 「ハンター協会のマーク、だっけかあれ」 「ということは審査委員会か。」 飛び降りてきた老人がハンター試験の最高責任者らしい。色々と規格外のじいさんだなぁ…あんな高さから落ちてきてきたわりにはなんともなさそうだし隙も全くない。あれが実力者の頂点、ということなのかな 飛行船に乗せられて移動した場所はマフタツ山というらしい。ここに生息するクモワシの卵でゆで卵を作るらしい。 「あ、あなたはパスしてもいいわよ。試験は無効とはいえ合格であることには変わりないし」 「そうですか、それじゃ遠慮なく。」 受験者が崖に次々と飛びこんでいくのを眺めてるとさっきの男が寄ってきた。張り手を喰らったせいか顔が傷だらけで鼻に詰め物をしている。 「お前はさっき合格した奴だよな。」 「あぁ。君は行かないのかい?」 「流石にこんなとこは無理だな。」 「私もこれはちと嫌だなぁ。底が普通に岩だらけならやってたんだけどね。」 「(岩だらけならいいのかよ)やっぱり運が無かったのか…」 「運も実力のうちというしね。まぁ毎年あるのなら来年もやればいいじゃん、命あっての物種だし。…よし火ついた。」 メンチさんから頼まれた火おこしをしながら駄弁っているとゴンたちが無事に戻ってきた。 「せっかくだし誰かにちょっとゆで卵貰おうかな」 「…オレは、」 「せっかくだし君も誰かに貰ったら?試験でも楽しまないと勿体無いよ。」 「いいのか?オレはさっき…」 「誰も気にしてないって。あのツンツン頭の子とかならくれると思うから後で声かけてみなよ」 そう言い残してゴンたちに駆け寄る。ゆで卵の完成待ちらしい。 「あ、アルー!!卵取ってきたよ!!」 「あんなとこよく飛び込めたよねみんな…私無理だわ。さっき合格しといて良かったようん」 「なんか以外だな。アルってなんでもできそうだけど」 「泳ぎは絶対無理!!死ぬ!!」 「え、じゃあ魚どうやって取ったの?」 「んなの掴み取りに決まってるじゃん。いくら水が嫌でも一瞬なら大丈夫だしね」 「なんか変わってんなお前。」 「ハイハイどうせ変わってますよーだ」 くそうレオリオに言われるとなんか心外だな。ま、四人とも合格だしいいや。 「うおっ、これうめぇ!!」 「あぁ、市販の卵とは大違いだ。」 「あ、そだクラピカそれちょっとちょうだいよ。」 「分かった。…ほら」 クモワシのゆで卵を食べているとアルがやってきた。少し分けたそれを口に放ると顔を綻ばせたのを見て身体の奥がじんわりと暖かくなったような気がした。 「うん、確かにこれは美味しいわ。やっぱりいいねぇ、同じものを誰かと共有するのは。」 「同じものを共有する?」 「そう。私は料理の醍醐味はそこだと思う。同じものを感じたり、思ったり。そういうのを通して人の距離は近づくんだよ。心を閉ざしてたら誰かとなんて仲良くできないもの。」 「なんか小難しいこと言ってんなお前」 「簡単に言えば一緒になにかすれば仲良くなるってこと。例えばデートとかさ」「なるほどな。」 同じものを共有する…か。確かに彼女の言うことは的を射ているように思った。だとすれば、さっきは同じものを感じて嬉しいということだろうか。 「…まぁ、なんでも共有できるわけじゃないんだけど」 「なんか言ったか?」 「なーんも。さ、飛行船に移動らしいしさっさと行こうよ!」 「ちょっ、待てよアル!お前足早すぎ!!クラピカもさっさと来ねぇとあいつに置いてかれるぞ。」 「あぁ。」 レオリオには聞こえなかったらしいがはっきりと聞こえた声と寂しそうな表情はさっきの試験のことを思い出す。 「クラピカのおかげで大切なもの思い出せたんだ。」 ありがとう、と笑ってみせた彼女もどこか悲しそうだった。確かに昔の思い出は自分にとっても大切であり、自分の使命を思い起こさせるものだ。そういえばアルはどんな理由でハンターになりたいのだろうか。走っていく彼女の背中を見ながら思い、オレもレオリオとアルを追いかけた。 ← ×
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