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「二次試験後半、あたしのメニューはスシよ!!」

スシ、どこかで聞いた気がするけど思い出せないなぁ…なんか引っかかるというか…

「ふふん。大分困ってるわね。ま、知らないのもムリないわ。小さな島国の民族料理だからね。」

そういって案内された部屋には道具と材料が
るけど流石にこれだけで分かるのかな…ニギリズシってなんだろ?
あそこでニヤニヤしてる忍にでも聞いてみようかな

「なーんか引っかかるんだよなぁ…なんだっけな…」
「アルおまえスシ知ってんのか?!」
「いや、聞いたことあるんだけどなんか思い出せなくてさ…どこで聞いたんだろ…ニギリズシってのも気になるし」
「ニギリ…か。大体の料理のカタチは想像がついてきたが肝心の食材が全くわからねーぜ」
「んだねぇ。それに関しても多少なりヒント欲しいよね」
「具体的なカタチは見たことがないが…文献を読んだことがある。確か、酢と調味料を混ぜた飯に新鮮な魚肉を加えた料理のはずだ。」
「魚ァ!?お前ここは森ん中だぜ!?」
「う、レオリオ声大きい…それに森っていったって川や池とかあるじゃんか…」
「アルの言う通りだ。…大丈夫か?」
「耳元でそんな大声出してほしくはないんだけど…頭痛いけど、まぁ大丈夫だよ。クラピカたちは先に行ってて。」

大丈夫、と笑顔を作ってみせる。クラピカは少し心配そうだったけど私の言葉通りレオリオと一緒に外へ出ていった。

「魚かー…魚…あ。」

そうだ、思い出した。

「寿司なんて懐かしいや。とりあえず材料取りにいこうかな。」











でもどうしようかな。ここら辺にいる魚は淡水魚だし寿司ネタってほとんど海水魚だったような…そもそも淡水魚って骨多いし寄生虫多いからあんまりそういうのには合わないって言ってたような気がする。
そういうのは試験官さんたちは大丈夫なんだろうか…

「あ、アル!まだ魚とってないの?」
「ゴンか。うん、そうだけど…あ、どっかに川とか池とかある?」
「あっちに池があったよ!色んな魚がいてさ、ザリガニなんかもいたんだよ!!」
「ゴン、それだ!ありがと!!」
「うん、頑張ってね!」

ゴンが指した方角から水の匂いがする。ゴンに良いこと聞いたし、さっさと戻って調理しようかなー








「さぁて戻ってきましたよ…っとレオリオどうした。」
「アルか…俺のレオリオスペシャルが一蹴されたんだ…」
「うん…とりあえずドンマイ。」

と、レオリオが指差したものは料理とは呼びがたい代物。そういえば料理したことないって言ってたっけ…あ、ゴンも似たようなの作って一蹴されてる。ゴンも料理したことないのかな?







「おお!見た目完璧にスシだわ!!」
「見た目は、これでいいんですね。」
「せっかくだし味も審査させてもらうわ。試験官っていっても美食ハンターだしね。」
「え、それいいんですか」
「これだけでも充分合格ものよ。…これ美味しいわね!何使ったの?」
「見た目はエビみたいだけど…あ、美味しい。」
「ちょっ、ブハラ勝手に食べないでよ!!」
「これ、以外とエビに近いものなんですけど…分かりますか?」
「…もしかしてザリガニとか?」
「ブハラさん大正解」

高級食材だと言われるロブスターも所謂ザリガニなのだから池のザリガニでもいけるかなと思ったけど
思いの外評判が良くて安心。文句なしの合格らしい。

「でもまさか受験生にこんなスシ作れる人がいるとは思わなかったわ」
「正直私も忘れてたんですけど思い出したんですよ…昔に東から来た人に教えてもらったんです。刺身が好きだったのでスシもその延長で…って感じですかね。宿屋を経営してましたから料理には尚のことうるさかったんです。」
「なるほどねー、すごいわその人」

懐かしげの私の言葉から察したのかメンチさんがうんうんと頷く。今考えてもほんとすごい人だったと思えるから思い出補正とはものすごいものだ。事実すごい人だったんだけど。





「あんたも403番並!!」
「っくく、なにその顔」
「からかわないでくれ。そういうアルはどうなんだ?」
「合格いただいたんで暇になった。」
「なん…だと」
「いやー昔に作り方教えてもらったんだけど忘れててさ。クラピカのおかげで大切なもの思い出せたんだ。ありがとう。」
「…あぁ。」

どんなものであれ思い出は風化して美化されてゆく。気の遠くなるような昔のことでも、それは忘れちゃいけないものなのに。私が忘れたらそれは本当に無かったことにされてしまうというのに。


忍とメンチさんの大声の口論でまた頭が痛くなるのはこのすぐ後のはなしである。









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