02 「いつの間にか一番前に来ちゃったね」 「だってペース遅いんだもん。こんなんじゃ逆に疲れちゃうよな」 「私は汗臭いの苦手だから逃げてきたわ」 私とゴンとキルアはサトツさんのすぐ後ろ、走ってる人たちの一番前を走っていた。階段はまだ続いてるけど風は感じてるから出口は近い。はず。 キルアは余裕そうだけどゴンは少し息が上がってきてる。 「キルアはなんでハンターになりたいの?」 「別に。ものすごい難関だって言われてるから面白そうだと思っただけさ。ゴンは?」 「俺の親父がハンターをやってるんだ。親父みたいなハンターになるのが目標だよ」 とりあえず閉口して話を聞いてるとどうやらゴンの親父さんはなかなかすごいハンターらしい。そりゃ憧れるわけだよ。 「んでアルは?やっぱ仕事関係?」 「まぁそうだねー。ハンターライセンスがあれば仕事の幅が広がるしね」 「仕事って?」 ゴンとキルアに質問をくらったので仕事のことを話したらへぇ、と言われた。 「私やキルアみたいにとりあえずって感じで受けてる人は多いだろうけどそんな人たちはこのマラソンで落ちるんじゃないかなー」 と言ったらゴンはキルアとアルは余裕だから大丈夫だね!とか言ってきた。 「アルも、キルアも、一緒にハンターになろう!」 薄暗いトンネルから出ると視界には沼地が広がった。なんだか外が久々な気がして風が気持ちいい。 ある程度人が集まったところでシャッターが閉まっていく。その中で残った人だかりの中にクラピカと途中で上の服を脱いだレオリオを見つけて一安心した。 沼地はヌメーレ湿原(通称詐欺師の沼)というらしく人を騙して補食する生き物が多く生息しているらしい。 「そいつはニセ者だ!俺が本当の試験官だ!!」 そう言って男は人面猿なるものの死体っぽいのをみせてきた。隙だらけだし猿は傷痕からの血の臭いがしないしニセ者かあいつ 受験生の何人かがサトツさんを疑い始めた頃、突然の殺気と共に放たれたものを腰に提げていた鞘付きの剣で叩き落とした。拾ってみたそれはただのトランプだった。こんなものが殺気と飛んでくるのか…?と考えてるとウソをついていた男は顔面にトランプが刺さっており、サトツさんは両手に何枚かのトランプを受け止めている。あんな紙切れで人を殺せるものかなぁ… 殺気を辿ると見えたのはピエロのようなメイクを施した男だった。ヒソカ、だっけ。とりあえず受験生の一人の腕を切り落としてた(切った腕はどこにあるか分からなかった)から名前だけは知ってる。目立ってたし。 「次から試験官に対するいかなる攻撃も即失格と見なしますよ」 「はいはい◆」 ピン、とトランプをはじきながらサトツさんはヒソカに言う。ヒソカも納得したらしく殺気はトランプを投げてきた時よりはマシになった。マシになっただけで殺気は消えてないからどうにかして離れて走ってたいしサトツさんに引っ付いて走るか…? この際ヒソカがこっちに視線を送ってきてるのは気にしないでおこう。うん。 「あなたは、あの人面猿が私たちを騙しているのがわかってたのですね」 「あの人、試験官にしてはあなたと違って隙だらけでしたし、猿には傷があるのに全く血の臭いがしませんでしたから」 サトツさんのすぐ後ろを走ってたらサトツさんが話しかけてきた。どうして質問してきたかを聞いたら私が退屈そうだったらしい。 「それにその剣、なかなかの物ですね。」 「これは…、知り合いが作ってくれたものです。形見、のようなものでしょうか」 「そうですか、不謹慎でしたかね。」 「いえ、随分前のことですし。いつまでも引き摺ってられませんから。」 腰に提げた剣にそっと触れると鞘に隠れた赤い刀身が力をくれる気がした。大切な、私がそこにいたという証。そして紛れもない形見として、身を守るための武器として永い間この双剣を振るってきた。 「…なんか建物がありますけど、」 「二次試験の会場です。あなたが一番乗りでしたね。」 小さく見えたのは明らかに自然物ではない。二次試験の会場らしい建物には正午から試験開始と貼り紙もついている。今まで振り返らなかった背後を見るとまばらに人が来ていた。 ← ×
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