05



「アル!」

ぱたぱたと大好きな主人を見つけた犬のように嬉しそうなゴンが名前を呼んで駆けてきた。犬の尻尾があるならば左右にブンブン振っていたかもしれない。
部屋を出ると真っ黒スーツの人間が別の豪邸へ案内してきた。どうやらゾルディック家の執事に彼等が寝泊まりしているあの豪邸で三人は待っているらしかった。
わー!!と身長の都合上腰にタックル…じゃない抱きついてきた。とても勢いがいいのでそのまま押し倒されそうになったけどなんとか踏ん張った私を誰か誉めてほしい。

「アルお前なぁ…キルアの親父たちと知り合いなんて聞いてねえよ」
「う…何も言わなかったのは謝るよ。申し訳ない…。私としてはあの人たちに会いに行くのも目的の一つだったしね。」
「ま、過ぎたことをあれこれ言ってもしゃーねぇわな」

レオリオががしがしを頭を掻いているのを見て本当に心配されていたのだと痛感した。申し訳ないと思う反面、なぜそこまで心配されるのが分からないというのもあった。彼等は私に仲間意識でも持っているのだろうか。だとすればそれはとんだ勘違いにすぎないというのに。
私とキルアが戻ってくることは執事の一人から伝え聞いていたらしい。キルア早く来ないかなーとゴンがソファーに座って足をぶらぶらしながら呟いている。そういえば顔が傷だらけだがまたなにか一悶着あったのだろう、と結論付けていると視線を感じた。そちらをみればクラピカが何かを考えてるのか難しい顔をしていた。あ、背後からやけにニヤニヤしたレオリオが。

「クラピカ」
「なんだレオリオ…私は今考え事をしている。邪魔しないでくれ。」
「お前もアルになんか言えば良いじゃねーか」
「は?」
「お前だけだぜ、アルが帰ってきてなーんも言わないのは。あいつがいないとき一番落ち着いてなかったくせによォ」
「それはないだろう。第一必ず彼女にアクションをかける必要はないはずだ。」

ふむ、クラピカの言う通りである。確かにいきなりいなくなってそのあと帰ってきたからといって別になにかしないといけないという訳ではない。…まあそれだと少々寂しいのは否めないが何も言わずいなくなったのだ。こちらから何かいうことはできない。と思っている。
というか落ち着いてなかったって…ハンター試験のときも似たようなことがあったからそこまでなにも思ってないと思ってたんだけども。クラピカ本人も意外そうな顔をしている辺り、無意識だったのかもしれない。それを見たレオリオは無意識かよ!と嘆いていた。偶然だね。私も同じことを考えていたよ。











それからしばらくして。キルアがひょっこりと姿を現した。
さっきよりどこか吹っ切れた顔をしている。よかったよかった。

「ゴン!とあとクラピカ、えーと…リオレオ!」
「レオリオだ!!」

まるでついでのような扱いである。

「あとアル!てめえ兄貴たちと知り合いなら言えよ!」
「あのね、君は自覚無いんだろうけどゾルディック家って相当恨んでる奴らもいるんだから下手に言わないようにしてるんだよ?面倒事は誰だって嫌なものでしょ」

前は今以上にオープンで内心ひどく恐ろしくなったものだ。情報規制はなされているものの、思った以上にこの世界は様々な情報で溢れかえっているのだから下手なことは言わないに越したことはない。しかもキルアと会ったのはハンター試験。どこで誰が聞いてるかも分からないような場所でゾルディック家の知り合いなんて言えば大体想像はつくしそれで起こる面倒事はできるだけ避けたかったのだ。

「さて、五人揃ったことだしそろそろ行こうぜーあっそうだゴトー!てめえお袋になんか言われても追っかけてくんなよ!」
「承知しました」

ゴトーと呼ばれた執事が一礼した。キルアを先頭に執事邸を出ていく。
今度は、五人揃って。













×