02 「はぁー…キルアぼっちゃんの友達とはね」 嬉しいことだよ。と中年の男性、ゼブロは呟いた。 もし嘘だったとしても。暗殺者の友達なんて進んでなろうとする奴なんていないと思うのが普通だ。 彼曰く、そんな理由でこんなとこまで来る人はここで勤めて初めてらしい。まぁ相手が稀代の暗殺一家となればそれはそうか。 ごごご、と石が動く音が聞こえる。1を表す数字の扉を開いていくゼブロはさっきまでと明らかに雰囲気が違っていた。 石の扉は片方2トンあるらしく、開くだけでも最低4トンは必要になる。7まであるけどそれまでに数が倍になっていくというけどそれだとかなりの腕力が必要になるんじゃ… 「ちなみにキルアぼっちゃんはVの扉まで開けていったよ」 「てことは…12トン?!」 「16トンな」 16トン。その数字にも唖然としたが問題はここを通らなければならないということ。さっきの小さな扉は侵入者用でそちらから入ればあの太い腕の生き物に食い殺されてしまうからだ。入るだけでこの調子だとまるで住む世界が全く違うと言われているような錯覚がする。それは皆思っているらしく、特にゴンは不満顔だ。 「友達に会いに来ただけなのに試されるなんてまっぴらだからオレは侵入者でいいよ」 鍵を貸して、と手を差し出したまま動こうともしない。こういう頑固なところがゴンらしいといえばそうだが今回はそうはいかない。レオリオが説得を試みるもあえなく失敗しているのを聞きながら門を見上げた。 この門すら開けられない輩にはゾルディック家に入る資格は無い。 「ゴン、ありゃキレてるな」 「…だな」 ゾルディック家の執事との電話の悶着の後、どうもゴンは納得がいってないらしい。レオリオとクラピカと私の三人は苦笑しつつゴンのあとをついていったが釣竿を取り出して壁によじ登ろうとしていたので慌てて止めに入った。 「いいよ、二人は待ってて。オレ一人で行くから」 「そんなわけいくか!!」 「まず冷静になれ二人とも」 「そうそう。二人ともカッカしすぎだってば」 一歩も引かないゴンを見兼ねてゼブロが侵入者の鍵を渡すと言った。もしかしたら自分を覚えていて攻撃しないかもしれないと言っているがそれでも確率的にはほぼゼロだ。それでも、 「坊っちゃんの友達を見殺しにしたらもう坊っちゃんに会わせる顔がありませんから。」 あなた達が死ねば私も死にます。と言い切ったゼブロにゴンは釣竿を壁から外した。 「ゴメン。おじさんのこと全然考えてなかったね」 自分に非があると思ったらすぐに謝ることができて他人のために怒ったり、泣いたり、笑ったりできるからこそ、彼はキルアを友達だと正面きって言えるのかもしれない。 「もう一度、試しの門を開けますから今度はミケを正面からみてください」 「あ、ちょっといいですか」 「どうしたの、アル?」 「その扉開けてみてもいいですか?」 笑顔で聞くとはぁぁぁぁ?!とレオリオの叫び声が上がった。 「おま、これ片方2トンだぞ?!」 「でもキルアは16トン動かせたんでしょ?キルアにできて私にできない訳がない!」 「アルのその自信がどこから来るのやら…」 「まぁ構いませんが…あなた、女性でしょ?」 「女性扱いしてくれるのは嬉しいけど見た目で判断しちゃいけませんて」 扉に手を置いて深呼吸。力試しというのだから単純に腕力だけでどこまでやれるのか知りたいというのもあったのだ。 「…っらぁ!!」 1つ、2つと石の扉は動いている。ゆっくりと3つめと4つめも動いた。かなりの重さだがここまでくると限界というものがある。 「だー!!もうこれが限界!皆早くおいでー」 私の言葉にハッとしたようにゼブロ、ゴン、クラピカ、レオリオの順で敷地内に入ったのを確認すると扉から手を離し、私も敷地に入った。もう夜になり、扉の向こうは静かな森が広がっており、ククルーマウンテンがそびえ立っていた。 ← ×
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