01



ふわ、と欠伸が出た。あぁもう、体裁だけでもちゃんとしなきゃいけないんだけどな…眠くて仕方ないや。
見た目美味しそうなステーキ屋さんの地下がハンター試験の会場だったなんてちょっと意外だったけど案外沢山の人達が来てるんだな。

「お嬢ちゃん、眠そうだな」
「まぁ徹夜でここまで来たし。てかアンタ誰?」
「俺はトンパってんだ。まあここで知り合ったのも何かの縁。眠気覚ましにこれでもどうだ?」

いきなり話しかけてきた太めの男はトンパとかいうらしい。なんか飲み物くれたけどなんか怪しい。なんか企んでる顔してるし、絶対何か入ってんなコレ。
どうしようか思案してると、また誰かが近寄ってきた。なんか今日はよく誰かに話しかけられるなぁ…

「なぁお前、そのジュースくれない?」
「これ?絶対何か入ってるよ。毒とか下剤とか」
「知ってる。何の毒かは知らないけど俺って毒とか平気だからさ」

せめて何の毒か分かってから飲むべきだと思うよ…!まぁ大丈夫そうだしいいか

「てか、なんか入ってるってよく分かったな。お前何者?」
「私はアル。何でも屋してんのよー。ヒートヘイズって知らない?」
「あぁ!あれってお前なの?!」
「そうそう。んで、君は?」
「俺はキルア・ゾルディック。暗殺一家の。」
「あー、ゾルディック家の。んでもなんでその有名な暗殺者さんがハンター試験なんて受けたのさ」
「んー…なんとなく、って感じかな。ってかなんでそんな反応薄いわけ?」

それは暗殺者に対して?と聞いたらキルアは当たり前だろ!と言ってきたからそりゃ暗殺者ぐらいじゃ驚かないよと言ったら逆に私が驚かれた。なんでだ。

「こんなにうっすい反応されたの初めてだ。」
「そりゃ暗殺者でいちいちオーバーな反応してもねぇ。私も何でも屋なんだから暗殺のひとつやふたつやるよ。」

んだそりゃ…と呟きつつキルアはトンパを見つけて駆け寄っていった。またジュースもらう気か。周りを見回して目に入った三人組と目が合った。

「んおお!綺麗なおじょーさん!!」
「初対面にその言葉はどうなんだレオリオ。」
「誉め言葉ありがとねおにーさん。でもそれじゃ美人は落とせないねぇ」

私がレオリオと呼ばれた青年に笑って答えてみせた。

「あぁそういえば言ってなかったね。私はアルっていうんだ。よろしく。」
「よろしくね、俺はゴン!」
「俺はレオリオだ。そいつが言ったから分かってるだろうけど。」
「そいつじゃない。クラピカだ。」
「ふんふん。ゴンにレオリオにクラピカ、と。」

各人に紹介してもらったところでアラーム音のような音が鳴り響いた。受付終了の合図、そして試験開始の合図だ。

歩き始めた男の人に違和感を感じる。どうやら歩くスピードが上がっているらしく先頭が走り出す音が聞こえた。

「申し遅れましたが、私は一次試験担当官のサトツと申します。これより皆様を二次試験会場へ案内いたします。」
「…ん?二次試験会場ってことは一次試験は始まってるってことかな?」
「その通りでございます。」

私の発言が聞こえたのかサトツさんがこちらをちらと見た。

「二次試験会場まで私について来ること。これが一次試験でございます。場所や到着時刻はお答えできません。ただ私について来ていただきます。」

サトツさんの言葉に周りがざわつく。なかなかめんどくさそうだな、と呟いた声は足音にかき消えた。







×