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「お、おいお前…」
「んんー?なんだいレオリオ。」
「なんか…別人みたいだな」
「あぁ。アルはまるで人を殺すことに慣れているように見えた。」
「ふふん。舐めてもらったらそれだけ不意は打ちやすいもの。」

クラピカと話しているとレオリオとキルアが女は怖いとひそひそ話してるなぁ。そこ聞こえてるよ?





そんなこんなでキルアやレオリオと駄弁っていると次はキルアの番だが本人は乗り気ではないようだ。あっさりと参った発言にポックルは唖然としていたがひとまずの合格にほっとしていた。






そして、次の試合。

「やぁ、久しぶりだね。キル。」

ピンを抜くとバキバキと音を立てて顔が変わっていき、最終的には全くの別人の顔になっていた。長いストレートの黒髪に光を宿さない目と中性的な顔立ち…記憶が正しければ彼はゾルディックの長男坊だ。彼曰く母親に言われてキルアを観察していたらしいがそれなら原理は分からないがあのピンで容姿を変えていたのも納得がいく。

そして彼はキルアに淡々と言葉を並べていった。私もまた、その言葉を反芻して心の中へ落としていく。結局のところは私も彼らと同じなのかもしれないのだ。

お前は熱を持たない闇人形。お前は何も欲さない。
唯一喜びを得られるのは人の死に触れた時。
人を殺すのに友達などいてどうするというのだ。
お前は、友達を裏切る。

それは私のことかと心の中でせせら笑う。
キルアは欲しいものならある、友達が欲しい、と小さな声ではあったが確かに言った。

「ばっかやろう!!お前はゴンともう友達じゃねぇか!!!」

少なくともゴンはそう思ってるぞ!!と大声で叫ぶレオリオ。クラピカも柔らかく笑っている。確かにゴンならレオリオと同じことを言うだろうことを考えてると自然と笑顔になった。
だが、ゾルディックの長男坊…イルミは表情一つ変えずにさらりと言ってのける。

「向こうはそう思ってるのか…。困ったな。…そうだ、ゴンを殺せばいいのか。」

嘘だ、と瞬時に分かった。今そんなことをすれば失格になるのは彼だ。だがキルアを始めとするゴンと交流のあった受験者には効果があったらしく扉の前に立った。それを遮る黒スーツの男はピンであっという間に顔の形を変えられてしまった。

「イルミ、流石にやりすぎじゃないかな。」
「アルには関係ないよ。これは家の問題だからね。」

そう言われるとこちらからは何も言えない。そもそも試合中に横から何かを言うのはルール的にもよろしくないのだ。
レオリオがてめぇ知り合いなら止めろだの言ってるけど無視。それにこいつけっこう意固地だから意見を曲げてくれるのってそうそうないんだよなぁ…




その後、結局キルアは負けを宣言した。元々白かった顔色は真っ青になり何を話しかけても反応をくれなかった。クラピカもボーっとしてるしレオリオは次の試合で緊張してるのか話にならなかった。つまらん奴らめ。






そのすぐ後のレオリオとボドロとの試合。開始直後に走り出したキルアの手を掴んだが冷たい表情で私を一瞥するとあっという間に手を振り払い、ボドロの背中を一突きした。

「キルア…っくそ…」
「アル…今、キルアを」
「捕まえた…つもりだったんだけどね。完全に油断してた。」

まさかあんな力で振り払われるとは思わなかった。私はキルアが出ていった扉を一瞥し、ボドロに心の中ですまなかったと詫びることしかできなかった。









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