08



さて、問題はここからどうやってこのトリックタワーに入るかなんだよなぁ…意外と頑丈なんだよなこれ。めんどくさいから突っ込むか?…いやいや、それで崩れたら中の人に被害が出るから駄目だ。

ごぉ、と炎を放つとあっさりと岩の壁は壊れた。よし、これくらいならタワー自体は壊れないはず。


壊した壁は大分下の階だったしあっさりと最下層に降りることができた。所要時間は五時間半。残り66時間どうしようかな…







「やぁ◆」
「やっぱり君が一番乗りなんだね。」
「一番乗りは君じゃないか。どうだい?僕と一戦◇」
「やだなぁ、怪我人と戦うなんてするわけないじゃないか。」
「こんなのかすり傷だよ◆」
「っと、危ないなぁ。」

こんなのはなんてことはない、というようにトランプを投げてくる。向こうは戦う気満々らしくすでに殺気がすごい。

「どうせ暇なんだし、いいじゃないか◇」
「…はぁ。君に付き合う私も私なんだろうなぁ」

暇潰し。ただそれだけに戦いを始める辺り、私はこういう道がお似合いかもしれないのかもしれない。
ただ、暇潰しである以上彼のトランプで致命傷は避けたい。今後の試験にも影響するし。

「ただし、そのトランプを使わないことと次誰かが来たらその時点で暇潰しは終わりにするのが条件ね。」
「まぁ、仕方ないね◆」

じゃあ、いくよ。と前置きしてヒソカに手刀を食らわせる。加減してるとはいえ、流石に防御されるか。
視界のすみから飛んでくるのを避けながら足払いを狙いながらヒソカの弱点を探す。彼は殺気がものすごいぶん、攻撃が読みやすいから避けるのは意外と簡単だ。こういうことができるのも肉弾戦のみにしているからであってトランプ込みだと他のことなど考えることはできないだろう。
足払いは予想外だったらしく、少しよろけたがそこは奇術師らしく器用に体制を建て直して蹴りを仕掛けてくる。 なんとか受け止めたものの一撃はかなり重い。本当に肩の傷なんて無いようにすら感じる。そのまま腹を狙って殴りに来たが真ん中は避けやすい。かわしてそのままカウンターの膝蹴りを食らわせるとさっと距離を空ける。
実力もさることながらなにより嫌なのが殺気。まとわりつくような、そんな感じの。戦うほどにそれはどんどん増していく。
できれば、早く受験生が来てほしいものだ。なんて思いながら次の受験生が来るまでの半日をこんな感じの組み手もどきで過ごしていた。












「…遅い。なにやってんだあいつら…」

あいつらとはもちろんゴンたちだ。残り時間5分を切ったのだ。彼らなら一人でも来たら安心したけれど、一人も来ないのだから心配にならない訳がない。少しだけ一緒にいただけなのにいつの間にやら情が移ってしまった自分に多少なり驚いた。普通ならこんなに他人のことでやきもきしないのになぁ…


「まったく、バカにも程があるよ。来年再挑戦すればいいのにさ。」

残り3分になったところで初めての死者が出た。それだけハンターになりたいのかな…あ、

「もしかして四人ともタワーのどっかで死んでるんじゃないのこれ…」
「それはないよ◇」
「んー…そう信じたいのは山々なんだけどさぁ…」
「どうしても最悪の結果を考えてしまう、とか?◆」
「…ヒソカさんは読心術でもできるわけですか?」
「奇術師のカンだよ◇」
「はぁ…呆れた。そういえば、ほんとにその傷大丈夫なの?」
「別に大したことじゃないし気にしなくていいよ◆」

本人がああ言ってるならいっか。…それにしても…カン、か。まぁ確かに彼らならなんとかなりそうな、そんな気がする。呆れたとは言ったけどヒソカはなんだかんだ言ってゴンたちがここに来るってことを信じてるんだよな…

「もう信じるのは疲れたんだよ。」

信じて、それでも守れないものはたくさんあるんだから。
これなら彼らと試験受けるんだったな…私は別にそこまでして受かる必要なんてないのだから。


「ってて、まさか出口が滑り台だなんてなー。」
「そうそう!びっくりしたよ。」
「なんにせよ、これで脱出できたわけだ。」
「3人とも!」

残り1分でキルア、ゴン、クラピカの順でやっと来た。少し遅れてレオリオと何故かトンパまで来た。…ほんとになんでトンパがいるんだろ?

「君たち遅すぎだよ!私てっきりタワー内で死んでるかと思った!!」
「勝手に殺すなよ!アルはいつ来たんだ?」
「5時間半ってたかなー。2日以上暇してたよ。」
「5時間半って…一体どんなルートを通ってきたんだ?」
「う、それは秘密。」

興味津々といった感じで四人がこっちを見てくるけどこればっかりはパス。適当にでっち上げてもいいけど皆察しがいいからバレる可能性だってあるしなぁ…





結局適当に言い逃れしてタワーから出るとタワーに自分で穴を開けた箇所が見える。思ったより大きめに空けちゃったかなぁ…まぁ崩れなかったしいいか。










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