1遠乗り 或る晴れた日の昼下がり。 「私、後ろがいい!」 「いや、俺の前に来い。見えないだろう」 クマ大尉とアイリスちゃんが医務室でコーヒー片手に何やら言い合っていた。 俺はてっきり夜の事でも話してるのかと思って… 「…………なにヤラしい事話し合ってんですか」 二人に向かって言った途端、二人同時に振り向いた。アイリスちゃんに至っては顔を真っ赤にしている。 「「違う(います)ッ!!!」」 「………………そ、そんなに怖い顔しなくても」 まあまあ、とひきつった笑顔を見せる。すると、椅子に座り直した大尉が溜め息をついた。 「ニール、お前はどう思う?」 「何がですか?」 「天気もいいし、遠乗りに行こうと思うのだがアイリスが俺の後ろがいいと聞かないのだ… 俺は体がでかいから、駆ける時に後ろにいると振り落としそうで怖い」 「…だから!私もずっと馬に乗ってたから大丈夫です!だって前にいるの…恥ずかしい…もの」 「だから俺の事は気にするなと言っている!」 「でも…!」 何だかんだで微笑ましい痴話喧嘩が続く。 なんでも、大尉はアイリスちゃんを自分の前に座らせたいけれど、アイリスちゃんは後ろにくっついている方がいい…というのを延々話し合ってるらしい。 「……早く決めないと、日ぃ暮れますよ?」 「む………」 「そうなんだけど…」 「もう一人ずつ馬乗ってけばいいんじゃないですか?」 「…それは嫌だな」 「………うん」 それは譲ろうとしない二人に苦笑が漏れる。 「うーん…俺から言わせて貰うとアイリスちゃん、前の方がいいと思うよ」 「……そうですか?」 「うん。 大尉の腰を掴んだ時、アイリスちゃんの胸を大尉にしっかり押し当てたいなら反対しないけど」 「「…!!!!」」 結局アイリスちゃんが大尉の前に乗る体勢での遠乗りに落ち着いた様だ。 「……ニール、貴方も大変ね」 「いえいえ。俺、愛のキューピットですから」 今頃二人は緑が息を吹き返し出した雪解けのブリッグズ山を駆け巡っている事だろう─────… fin. → 戻 1/5page |