「バッカニア、ごめんね!本当にごめんなさい!!」
「………………」

先生に用があり、医務室を訪れると平謝りするアイリスと、その声を無視するかの様に背を向けはぶてているバッカニア大尉の姿があった。

「あら、マイルズ少佐、珍しいですね。医務室にいらっしゃるなんて」

二人の様子を面白そうに眺めていた女医のケイトが振り向いた。隣ではバッカニアの機械鎧技師も笑いを堪えている。

「何事だ………」

あまりのアイリスの必死さが憐れに思えて尋ねてみた。まぁ、おそらく女医達の思いつきにあの二人が振り回されているのだろうが…。

「アイリスが『先週の研修中に東部勤務の男の人と浮気した』って言った途端、ああなっちゃって」

俺の書類を受け取りながら女医がくすくす笑っている。

「アイリスが浮気…?あり得ないだろう」

周りはバッカニアの方がアイリスにベタ惚れという風に見ているが、実はその逆で、離れていると途端に元気がなくなるのはアイリスの方だ。

かれこれ4年くらい経つが、未だ二人の熱愛ぶりは周知の事実であり、毎晩部屋から聞こえてくるアイリスの甘い啼き声に羨ましいと苦情が入る程だ。

何より研修中に男と遊ぶ様な事などしていたら、直ぐにでも見つかり女王様の手であの世行きだろう。

「ププ…そりゃあ、あり得ないですよ。なんたって、今日はエイプリルフールですから!」
「………だろうな」

ニールが涙目になりながら種明かしをする。相変わらずのノリに呆れ、ハァと溜め息をつき踵を返そうとした。が、ふとバッカニア大尉への伝言を思い出した。

「バッカニア大尉」
「は!」

腑抜けていても直ぐにスイッチの入るところは羨ましい限りだ。

「ガーフィールという女から電話があったぞ。次はいつ来てくれるかだと」
「は…?!」
「な…?!バッカニアッ?!!」

今度はバッカニアの方がアイリスの様子に慌て出した。

「私のはエイプリルフールだったのに!バッカニア、ほんとに浮気してたの?!」
「ち、違っ!!誤解だ…!俺は機械鎧のメンテを頼んで…!」
「え、今の冗談だと思ったのに……女の人にメンテしてもらったなんて一言も聞いてない!!」

バッカニアが慌てて喋れば喋るほど、要領を得ず墓穴を掘り続けていく。

「大尉やりますねぇ〜。メンテと決め込んでデートですかあ」
「アイリスとその娘で二股かけててよくバレなかったわねぇ」
「お前ら!!」

女医と技師の追い討ちに、振り上げたパイプ椅子を投げつけそうな勢いのアイリス。もう一つ言い忘れていた事を思い出す。

「ああ…そういえば、次の夜が楽しみと言っていたな。早く連絡してやれよ」
「…!!!バッカニアーッ…!!」
「違う!アイリス…!アイツは!!」

ガーフィールから連絡があったのは事実だった。演習中に少し世話になったのだろう。
じゃあ伝えたからな、と更に賑やかになった部屋を後にした。




fin.



   
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