「アイリス、今日はもう遅い…送ろう」 アイリスと休日を共に過ごすようになってひと月。午前中に彼女を迎えに行って、日中はウインドショッピングや遠乗りに出かけ、夕飯を一緒に食べた後は彼女を送るというルーティンを繰り返していた。 「大尉………」 「……なんだ、ニール」 俺専属の機械鎧技師が目を見開いてあり得ないといった表情で俺を見ながらパーツの付け替えをしている。 「なんすか、その健全過ぎるお付き合い。八時に帰しちゃったって事はもしかしてアッチの事はまだ何も…?!」 「……………悪いか」 気恥ずかしくもありボソボソ呟く俺を見て天を仰ぐように片手で顔を覆うニール。 「仕方ないだろう、何ぶんこの類の事は初めてで……ん?なんだニールそれは」 急に部屋の奥へ駆け込んだかと思うと、何やら沢山の物を抱えて戻ってきた。嫌な予感がしてチラリと横目で見ると、案の定サイドテーブルに積まれたのは女性のあられもない姿の写真集なりアダルトビデオの類。 「ニール…」 「アイリスちゃんとイチャイチャしたいって気はあるんでしょ?!」 「…………無い訳では無い」 いや、有る。が、口にするのは烏滸がましいし、恥ずかしい。 「俺の秘密グッズぜ〜んぶ貸してあげますからしっかりアイリスちゃんを気持ち良…」 と、言いかけたニールの後頭部に勢いよく大きなハリセンが直撃し怒声が響く。 「馬っ鹿じゃないのっ?!」 「せ、先生!」 ニールの死角から姿を現した先生ことケイトが忌々しげに前に転げたニールを足蹴にしてハリセンを手に打ち付ける。 「痛て〜。ひでぇ〜、ケイト」 「アンタ、相変わらず分かってないわね。オトコの持ってるエロ本とエロビデオで女性が気持ち良くなるワケないでしょ!!」 一方的過ぎるのよ、と言い放つと、俺の手の上に少し厚めの冊子を置いた。 「…………先生、何だこれは…」 「ホホホ、ブリッグズの保健室の先生ケイト推薦、女性の快感を引き出すマニュアル本よ。これで大尉のアイリスも善がって貴方から離れられなくなる事必至!」 「………!」 嘘だ〜、それなら俺が欲しいねと床に転がってこちらを見ているニールが呟く。改めて表紙を見ると確かに帯には沢山の女性から支持を得ている触れ込みがぎっしり書いてある。男の俺からは分からない事が女性目線からは沢山あるのだろう。アイリスが俺で気持ち良くなってくれるのなら…。 「せ、先生、これは…」 「500センズ」 「!」 にっこり微笑った先生の手が俺に向かって差し出されている。 「500センズ?!ケイト、そりゃぼったくりだろ〜」 「ニールは黙ってなさいよ。さぁ、大尉、どうします?男の欲望でアイリスを泣かすのと、女の悦ぶテクニックでアイリスを悶えさせるのと」 ………そこまで言われると、もう一択しかないではないか。 「毎度あり〜!」 普段の珈琲の売上の数倍の硬貨を受け取ってご満悦な先生。こんなやり取りをしている事に気恥ずかしくなりつつ、俺は冊子を受け取るとそっと懐に収めた。 「大尉、」 「なんだ、先生」 「それ、冗談抜きで良書だから。しっかり読んでアイリスの躯を大事に扱ってあげて」 「あ、ああ。言われなくても分かっている…」 戻 1/1page |