「アイリスちゃんはどのタイイが好きなの?」 「えっ…?」 医務室の扉を開けようと手をかけた瞬間、扉の向こうから聞こえてきたニールとアイリスの声。 「あ、…えと、ニールさん、」 慌てふためくアイリスの声に、おそらく夜の事だろうと察し、すぐにでも部屋の中へ入ろうかとも思ったが、その先を知りたい気持ちも湧き上がり、扉にかけた手を留めた。 「ニール、それセクハラ確定よ」 淹れたての珈琲に口をつけながら女医のケイトが白い目で専属技師を見る。まあ、私も多少は気になるけど…等と扉の磨り硝子越しに映る影に一人気づいた女医は続ける。 「で、どうなのアイリス?どのタイイがお気に入り?」 「ど、どうって言われても…っ」 二人に答えを迫られたアイリスの泣き出しそうな声色に体が先に動き、勢いよく扉を開けた。 「おい!ニールに先生!俺のいない間にアイリスで遊ぶのはやめてくれっ」 頭をぶつけないよう屈んで中に入ると、背を向けたアイリスの体を直ぐ様左腕で抱き寄せた。 「バッカニア…っ?!」 腕の中に納まり驚きながら俺を振り返るアイリス。羞恥心から頬を染め、瞳にはうっすら涙が浮かぶ。 (む…、可愛い…) こんな状況とはいえ、アイリスの可憐さに密かにときめき、安心したように俺に体を預けてくることに優越感さえ感じる。 俺が飛び込んで来るであろう事を察知していたケイトは明後日の方向を向き、ニールは俺の予期せぬ登場にキョトンとしていたがしばらくするとクツクツと笑い出した。 「ニール、何が可笑しい。返答次第によっては…」 左腕にアイリス抱いたまま、右手のマッドベアGを握り直す。本気で張り倒すぞオーラを出している俺を見て、ついには吹き出し腹を抱えて笑い出した。 「ニー…」 「はははっ、まったまた〜。オレ、“どの大尉?”って言っただけで、体位の事なんてひとっことも言ってないよ〜ん」 「「……!!」」 クロコダイルの大尉でしょ〜、マッドベアGの大尉でしょ〜と、あっけらかんと指折り“タイイ”の種類を羅列していく。 種明かしをするニールにそんな事だろうと思ったわ、と肩を竦め手の平を空に向けるケイト。ニールの言い方がトラップだったとはいえ自分の勘違いに今まで以上に赤面するアイリス。当のニールは俺たちの抱き合う姿を見て「いよっ、ラブラブ」とにこにこしている。 「…そうか、ニール。お前の冗談はよおぉぉく分かった…」 その後数日の間、砦でニールの姿を見た者はいなかったという。 「うぅ…クマ大尉め…」 「自業自得でしょ」 戻 1/1page |