「あーなんでここの女の子は皆スラックスとかロングスカートなんだよ!ただでさえむさ苦しい職場なんだからせめてもうちょっとこう潤いがさぁ…」 とぼやいているのはお馴染み機械鎧技師のニール。ロングではないが長めのスカートのケイトはまたかと呆れた眼差しを送る。 「あー。今俺の事バカにしただろ…」 「当然。だって男の欲求満たすだけでそうする必要性がないじゃない」 至極当然の返答にニールは地団駄を踏みながら悔しがった。 「くぅー!必要性だな?!必要性があればアイリスちゃんがメイド服を着てくれるんだな!」 「そうかもしれないわねぇ」 適当に返した筈が、少将に必要性を訴えてやるー!と勢いよく医務室を飛び出して行った。 「……アイリスのメイド服なんて、大尉が許すわけないじゃない」 ケイトの予想通り、バッカニアはアイリスのメイド姿を他の男達に晒すのは言語道断!という反応だったのだが…… 「なに?医務室の女の格好をみなメイド服にして欲しい?」 「アイ、マム!」 アームストロング少将は徹底した合理主義である。 「それで仕事の効率が上がるのか?」 北の為、国の為になるのなら、 「よろしい、採用しよう」 妥協は、しない。 「……で、何がどうなるとメイド服に行き着くの?!」 医務室にアイリスの悲鳴が響いた。 なんとニールの嘆願が見事通り、作業従事でない医務室の女はメイド服、又はそれに準じるものの着用が義務付けられたのだ。 下着が見えるか見えないか、ギリギリの丈のスカートの裾を押さえながら、朝一に洗濯物を運ぶアイリスは階段下から覗く男達の視線を一身に浴びていた。 「(少将のバカ〜!どこが仕事の効率化なの〜っ)」 逃げ出したい気持ちを抑えながら大型の乾燥機に衣類を放り込み、包帯などの薄いものは乾燥機の温風の当たるところへ掛けていった。 急いで仕事を終わらせ(急いだ為にいつもより3分は速く終わっていた)洗濯カゴを持つと男達の視線を避ける様に階段を降りていく。 ウエストでキュッと締まりお尻を包み込む様に広がったフリルのスカート、それに重なる白いエプロン。その下から覗く触り心地の良さそうな太股。太股の辺りまである長めの白いタイツにはレースがあしらってある。胸から首にかけてもギャザーとレースがふんだんに使われ、胸の形が強調されるデザインだ。メイドらしいひらひらしたカチューシャも加わり何処からどう見ても(一部の人間の煩悩に則った)完璧なメイドさんである。 これで仕事の効率が上がるわけがない!と思っていたが…… 「アイリスちゃ〜ん!先生!俺今日の仕事終わったよ!」 「コーヒー淹れてちょうだいっ!」 「あんた達本当に終わったの?!早すぎるわよ?!」 少将の合理主義の巻き添えを食らったケイトはナース服に身を包み、抱き着いて来る男達を張り倒し足蹴にしていた。山積みになる男達はケイトの足蹴に快感さえ覚えているようである。 「ほんとですって先生!ほら、今午後4時10分!4時に終わって報告書上げて医務室に直行!ね?」 腕時計を指差してケイトに説明している。く…っ、とケイトは不満気だがきっちり仕事をこなした人間に文句を言う事はできない。 そう、確かに男達の仕事の能率は上がり、いつもは若干サボり気味の氷柱落とし隊も完璧に仕事をこなし、時間通りに終わらせている。 勿論、ケイトをはじめ、アイリス達のメイド姿を見て、極寒の地の厳しい仕事の中で潤いを得る為である。 「……分かったわよ。コーヒー淹れてあげるわよ、スペシャルブレンドコーヒー」 頭痛い、と顔を覆いながら溜め息混じりにインスタントコーヒーの瓶に手を伸ばそうとした瞬間、うぎゃッ!とダミ声が響いた。 「私に触るなんて百年早くてよ」 腰の辺りに触れようとした男の手にお灸をすえている。 ホーホッホッホと高笑いが聞こえる分にはナース姿を楽しんでいるようだ。 「ふん、くだらん……」 と、当初メイド服の反対を押し通していたバッカニアだったが… 「ほんと、やんなっちゃう…。 はい、バッカニア。怪我には気をつけてね。……バッカニア?」 指先の傷口に絆創膏を貼ってくれるメイド姿のアイリスを目の当たりにした途端、 「バッカニアじゃない、ご主人様だ。」 「!!」 メイド推進派に転換したのだった。 「「「メイド服バンザーイ!!」」」 fin その後、ケイトは階級、生まれ、性別関係なくメイド服着用の有用性を滔々と語り、少将のOKを得た。 双眼鏡越しに目に入るむさ苦しい男達のメイド姿に、ドラクマ側は恐れをなし、しばらく静かにしていたという。 「これは思わぬ効力だな」 「いえ…止めてくださいボス…」 「何を言う。ドラクマの驚異を振り払う事こそ我らの仕事!」 メイド服着用義務化は1週間ほどでお蔵入りしたのであった。 「…───というブリッグズ砦の実践記録があります」 マスタングの隣で北の報告書の写しを読み上げるホークアイ中尉。 「メイド服など続くわけがないだろう。ミニスカの方が現実的だ!中尉がなんと言おうと私はミニスカ政府を…っ!」 夕闇迫る司令部の一室に銃声が響いた。 戻 1/1page |