春風 今までは傍に寄るだけで目を醒ましていたのに… 「バッカニ……ぁ…寝てたの」 日当たりのいい明るい窓辺。 外からは心地良い春の風が入ってきていた。高めの椅子に腰掛け窓際に躯を凭れ掛けたまま瞳を閉じている。前に垂らしたみつあみも風に揺れて靡く。手にした本にも風は遊び、読みかけのページをパラパラと捲っていた。 そっと前に立っても起きる気配はない。普段の彼なら人の気配に敏感で直ぐに気付き目を醒ますのに…。余程疲れが溜まっているのか、それとも… 「(気を許してくれてるの…かな?)」 日中、彼の居眠りをしているところなどなかなか見られるものではないので、まじまじと寝顔を見てしまう。 仕事をしている時とは全く別の穏やかな表情。今日は春の陽気にやられたのかぽっかり口も開けて子どもの様に無垢な寝顔を見せる。 「(ふふ…可愛い。でも、ちょっと無防備過ぎるゾ)」 つんつん、と彼の頬っぺたを指先で軽くつつくと止めろと言わんばかりに眉間に皺を寄せ頭を揺らした。 「………ぐー…」 「(…あれ……まだ起きない)」 爆睡している事に苦笑し暫く寝かせておこうと彼の傍を離れた。 「良い夢を…」 薄い毛布を躯に掛けて、こめかみに軽く触れるだけの口付けを落とした後で…━━━━ fin 戻 1/3page |