「おい!お前大丈夫か!」

そんな事を言われたわたしは、ある人に助けられました。西海の鬼だとか言う人で、男気があって、部下に慕われていて、それでとても優しくて。わたしはその人が好きになったのかもしれない。分からないけど。でも胸がひどくドキドキするのは、多分その人が好きなんだと思う。


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元親さん、彼の名前はそういうらしく、わたしは彼の富嶽というところで世話になりながら、彼の事をずっと見てきた。見たり、話しかけられたり、笑顔を向けられたり、そうなるとやっぱりわたしの胸はドキドキして、きゅうっと苦しくなる。

でもわたしが好きになったとき、すでに彼には大好きな人がいた。わたしなんか目に入らないくらい、彼が夢中になっている人がいた。
その女の人は本当にきれいで、みんなを魅了するくらい。それになんでもできて。よく言えば完璧な女性。悪く言えば八方美人。
そんな女性を愛する元親さん、そんな元親さんに愛されている人が、本当にうらやましかった。

だからわたしはもう諦めようと思った。そんな二人の邪魔をしたくないのもそうだけど、なによりこれ以上わたしが彼を好きでいたら、きっといつか苦しい思いをしてしまう。だから、
もうわたしは、もういいんだ。


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会わなくなってから、故意的にわたしが会いにいかないだけなんだけど。わたしはなんだか楽になれた気がした。胸の痛みもなくなって、すっきりした。

「こんな所にいたのか」
「!!…元親、さん」

なんで。会いたくないのに出てくるの。そんなわたしの気持ちを知るはずもない元親さんはにこにこ笑ってわたしの隣に座る彼が、少し腹立たしい。わたしの気もしらないで、わたしの事どうも思ってないのに。あの人に見せるような笑顔でわたしを見ないで。
心がまた痛い。

「今日はみんなで宴だ。お前も、来いよ?」


くしゃくしゃっ。


頭を撫でられた。男の人に頭を撫でられるのは初めてで、その少しごつごつした手はわたしの頭をすっぽりと包み込んだ。また、胸がきゅうん、と奥でなった気がした。やっぱりわたしは彼の事が好きらしい。
わたしはこれからもきっと、彼が好きなんだと思う。