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※喜多西←隼
※無理矢理注意





喜多と西野空が付き合っているということは知っていた。
お互い隠していて部員の奴らは気づいていないようだが俺は見てしまったんだ、二人が部室で仲良くキスをしている所を。

無性に腹が立った。
交際を隠しているということではなく、西野空が喜多を選んだということが許せなかった。
なぜ…いつも隣にいたのは俺じゃなかったのか?


「おっはよー隼総ぁ」


何も知らない西野空が、俺の肩をぽんと叩いて挨拶をする。
本当腹が立つ、許せない。

平常を保ちつつ挨拶を返そうとしたら、運が悪いのか…アイツも部室へやってきた。


「おはよう、隼総…西野空」

「喜多ぁ、おっはよー!」


…喜多だ。
喜多が入って来た時、西野空の顔は満面の笑みに変わった。
お前はそんな風に笑うのか、俺には見せたこともない笑顔で。

考えれば考えるほどイライラが積もってゆく。
このまま喜多がいなくなって西野空が俺だけのものになればいいとさえ思ってしまう。

喜多は準備があると言って部室を出て行ってしまう。
西野空もそれを追いかけて行くのかと思ったが意外にも部室に残った。


「…喜多の手伝いしなくていいのか?」

「手伝いー?僕がぁ?面倒臭いのは嫌ぁ」


そう言いながら髪をがしがしと弄る。西野空の癖だ。
やるなら今しかない、そう感じた。
今までの関係が崩れてしまうかもしれないが、そんなことはもう考えられなかった。

このまま易々と西野空を喜多に渡してしまうことは絶対に嫌だ。
俺は一目散に西野空の肩を抱き寄せ、無理矢理唇にキスをした。


「…!!?」


西野空は何がおこったか理解できないのか、ただ呆然に俺のされるがままになっている。
俺はそのままベンチに西野空を押し倒し、顔をぐっと近づける。

西野空は驚いたようで、サングラスの奥の目がかなり動揺しているように見えた。
しかし、そんなことは関係ない。
次に俺は首筋にキスをし、その周辺を優しく舐める。


「…ッや、やめろっ!!」


西野空はやっと我に返ったのか、俺の肩を思い切り突き飛ばす。まだ動揺しているのか力は案外弱かったが、俺は西野空から離れた。

西野空は青ざめた顔でこちらを見て、片方の手で俺が口を落とした首筋を押さえている。


「なんで…こんなことすんだよぉ…」

「わからないのか?」


お前が好きだから、そう言いかけたが言葉が詰まって出てこない。
行動にはおこせるのに、可笑しい話しだ。

俺はもう一度西野空に馬乗りになり、顔を近づけると西野空は恐怖でいっぱいなのか目には若干涙が浮かんでいる。


「何をしているんだ、隼総」

「……っ、喜多…」


もう一度キスをしようとした時、準備が終わったのか喜多が部室へと戻ってきて、見られてしまった。
鍵をかけておけばよかったと後悔もした。

喜多はゆっくり歩みより、俺と西野空を引き離し、西野空を優しく抱き寄せている。


「何をしていると聞いている」

「何って…キス、だけど?」

「ふざけるな!」


シンと静まり返った部室に喜多の怒鳴り声が響き渡る。
滅多に怒鳴らない喜多がこんなに大声を出すなんて初めて聞いたかもしれない。
だが、そんなことは今は関係ない。

喜多はギッと俺を睨んでいる。


「次にまたこのようなことがあれば、厳重な処罰を与えるからな」

「…チッ」


また腹が立った。
好きなものを手に入れようとして何が悪いのか、苦労しなくても手に入った喜多に解るわけもない。

俺はそのまま部室を飛び出した。
逃げた、という言い方が正しいかもしれない。


「…くそっ」


こんな行動しかとれない自分に腹が立つ。

しばらくして部室を覗くと、喜多の隣で楽しそうに笑う西野空が目に入る。
俺には見せたこともない優しい笑顔で。
あんな顔をするのは知らなかった。


「お前はそういう風に笑うんだな…」



【どういう風に君は笑うの】

企画*横恋慕
お題*どういう風に君は笑うの

企画に参加させていただきました!
喜多西←隼総、凄く好きです。
隼総は手に入れたいものは手段を選ばない子なのかなぁと思って書かせていただきました。
片想いものは大好きです。

横恋慕様、楽しい企画をありがとうございました。





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