暫くレイトンの出方を伺っていたデスコールだったが、レイトンが何も言わないので、小さく溜息を吐いた。

「溜息とは、君らしくもない」

「そうだな…私からも質問いいか?」

デスコールが話しかけたからか、レイトンの雰囲気が多少和らいだ。

「どうぞ。何でも答えてあげるよ」

「……何故、此方側に?」

レイトンを直視出来ず、顔を背けたデスコールの態度に、レイトンは笑顔を崩さずに口を開いた。

「君を探す為。君を、傍に置く為の地位と財力が欲しかったんだよ。『大学の考古学教授』と言う、表の地位、肩書きでは、君は傍に居てくれないだろう?」

「私の所為か?」

「違うよ。自分自身の為だ。君が姿を消すから焦ったよ。おかげで、計画を前倒ししてしまったよ」

「計画?」

「そう。本当はもう少し時間をかけるつもりだったんだけどね。君を探すために、手っ取り早く小さい組織を潰して乗っ取ったんだ」

ニコニコと笑顔で説明するが、その内容はとんでもない。

「…本来の計画は?」

「うん。今までの経験や知識を生かして古美術商しながら、徐々に…のつもりだったんだよ」

「そうか。悪かったな」

「少しも悪いと思ってないくせに」

本来の計画を聞いて、形だけで謝ればふふふ、と笑う声。

「理由が判れば、もう話す事は無い」

上機嫌で笑うレイトンを無視して、デスコールは外套を翻して扉に向かって一歩を踏み出そうとした。

「逃がさないよ」

声と共に、カチャリ、と耳に馴染まない撃鉄の音。

「レイトン?」

デスコールが振り返ろうとした、その瞬間。

パンッ!と言う軽い音と右肩付近の衝撃の後に凄まじい眠気。

「…レ、イト……ン」

その場に崩れ落ちるデスコールに、レイトンは早足で近づいた。

「ごめんね?」

意識を失う寸前のデスコールが聞いたのは、レイトンの憂いを帯びた声だった。