「教授!おはようございます」

ノックが先か、開くのが先かという勢いでドアを開けたのは、レミ・アルタワ。

「おはよう、レミ。今日も元気だね」

ふふ、と笑うレイトンに、レミも笑顔を返す。

「あ。教授、論文…」

「はい。提出を頼めるかな?」

レミの催促を遮り、論文を渡すと、行ってきます!と元気に出て行った。

「廊下は走ってはいけないのではないかね?」

レミが閉めたドアをノックも無しに、笑いながら入ってきたのは見知らぬ姿で、聞き覚えのある声。

「………デスコール?」

首を傾げたレイトンに、当のデスコールはドアを閉めて仰々しくお辞儀をした。

「おはようございます。エルシャール・レイトン教授。昨日、書かれていた論文が気になりまして」

ゆっくりと、顔を上げながら言うデスコールの口元は弧を描いている。

「おはよう。デスコール。その話し方は止めてくれないかい?論文なら、あの後に書き上げて、レミに提出を頼んだばかりだよ」

「残念。一足遅かったか」

レイトンが言ったからか、早々に話し方を戻したデスコールにレイトンは微笑した。

「紅茶はどうだい?」

「頂こう、と言いたいが。」

レイトンの誘いに、デスコールは変なところで言葉を区切った。

「が?」

レイトンは、取りあえずで一人分の用意をしている。

「お嬢さんが戻ってくる」

デスコールが言い終わると同時にドアが開いた。

「提出してきました!」

「レミ。せめて、ノックくらいはして欲しいな」

苦笑いしながら注意すると、レミはお客さんの存在に気が付いた。

「あ!お客様がいらしていたんですね!気付かなくてごめんなさい。紅茶を淹れます」

直ぐに謝るレミに、デスコールが変装している青年は首を横に振った。

「いえ。朝からお邪魔してすみませんでした。用事は済みましたので、これで失礼します」

レミが居るからか、違う声音で話したデスコール。

声音と口調を即座に変えた相手に、レイトンは円らな瞳を瞬かせて、ふふ、と笑った。