「教授。お昼を買ってきました」

ノックと同時に現れたのは、紙袋を持ったレミ。

「やあレミ。もう、そんな時間かい?」

レミの声に反応したレイトンは、ペンを置いて背伸びをした。

「教授、この人は誰ですか?」

人が増えたのも気にせず、専門書を捲ってはペンを走らせるデスコールを見て、レイトンは一瞬固まった。

「(しまった。どう説明しよう)」

悩むレイトンを無視して、顔を上げたデスコールはニコリ、と笑みを浮かべた。

「こんにちは。ジャスティンと言います」

変装していたデスコールは涼しい顔で挨拶をしている。

「(あ…変装……私が言ったから?)」

仕事を押し付けるだけ押し付けて、彼の姿を見ていなかったレイトンは、声音を変えて偽名まで使ったデスコールに驚いた。

「ジャスティンさん、ですか?初めまして。私、教授の助手をしていますレミ・アルタワです」

ジャスティンと名乗ったデスコールに向かって挨拶するレミに、レイトンは思わず2人から視線を外した。

「もう、お昼なんですね。集中していて、気付きませんでした」

テーブルに広げていた物をガサガサとかき集めると、ソファの端に置くデスコール。

「そうだね。レミが来なかったら、気付かないまま夜になっていたかもしれないね」

冗談にならない事を言うレイトンに、レミが注意しようと口を開くより先に、デスコールが口を開いた。

「そうですね。集中すると周りが見えなくなるので、暗くなるまで気付かないかもしれません」

2人がそんな事を言うものだから、レミは注意する気を削がれてしまった。

「もういいです。サンドイッチを買って来ましたからどうぞ。紅茶、淹れてきますね」

レミが部屋を出て行くのを見て、レイトンはデスコールの隣に座った。

「本当に変装して来るとは思わなかったよ。声音を変えて偽名まで」

「変装をしろ、と言ったのは貴様だろう。声音と偽名は…頼まれた資料作成が終わっていないのに、蹴り出されたら堪らんからな」

「え?」

思いも寄らないデスコールの言葉に、レイトンはキョトンとする。

「?…私を使うくらいなのだから締切、ヤバいんだろう?」

「あ、うん」

ジィ、とサンドイッチを見ていたデスコールの手が伸びるのを見て、レイトンもサンドイッチに手を伸ばす。

「どうせ暇だ。最後まで手伝うさ」

言うだけ言うと、サンドイッチを食べ始めた。

「ありがとう。助かるよ」

素直に礼を言ったレイトンに対して、返事をすることなく黙々とサンドイッチを頬張っている。

2人で黙々と食べていると、レミが戻って来た。

「ローザさんにスコーンを頂きました!」

渡されたらしい包みをサンドイッチの横に広げ、紅茶を淹れるレミを眺めながらスコーンにも手を伸ばす。