『アキラの苦悩の日々』


3月14日。シキは上機嫌だった。

先月のバレンタインデーで、ささやかだが、アキラからのプレゼントを貰い、アキラにオーダーの軍帽をプレゼントしたのだ。

「総帥?随分と上機嫌のようですが。なにかあったんですか?」

アキラの言葉にシキはニヤリと笑った。

「総帥?」

シキの笑みに、アキラは悪寒が走ったが、気力で押さえた。

「先月のバレンタインデーの事でな」

「先月の?俺は総帥以外からは受け取ってませんよ」

「判っている。城内が静かだな」

「はい」

先月のバレンタインデーは何日か前から城内に詰めている兵士の落ち着きが無くなった。

が、今日は普段と変わらずに静かだ。

「あ、あの」

「何だ?」

「実は、お返しを用意できなかったのですが」

「構わん。夜にでも返してもらおう」

「…は、い」

シキに言われ、断れないとアキラは思った。

これが悪寒の原因か、とも思う。

そして、この日の安眠を諦めた。