リンは呆然としたまま、アキラの腕を掴んで去っていくシキを見送った。

「・・・死ぬなら、アキラの目の届かない所で・・・・・・か」

シキに折られ、地面に突き刺さる刀を視界に納めながら、リンは自嘲気味に笑った。

「リン。大丈夫?」

建物の影から出てきたのは、ケイスケ。

リンとシキの一戦を建物の影から見ていたようで。

「全然、歯が立たなかったよ・・・瞬殺って、感じだよ。アキラが居なかったら、殺されてたね」

片手で目を覆いながら言うリンに、ケイスケはあえて声を掛けずにリンの刀を拾うと、リンの側に落ちていた鞘も拾い、悪戦苦闘しながらも折れた刀身を鞘に収める。

「ケイスケ・・・俺、弱いかな?」

「リンは、強いよ」

ボソリと呟いたリンに、ケイスケは律儀に答える。

「でも、アキラだけならまだしも、シキ相手には瞬殺だったんだよ?」

「だったら、もっと強くなればいいじゃん」

ケイスケの言葉に、リンは勢い良く顔を上げる。

「そうか。もっと強くなればいいんだ!ケイスケ!!ありがとう」

何かが吹っ切れたのか、リンは刀を掴むと走り去った。

「ケイスケ〜。リンはどうした?」

リンが居なくなってから、数分後。

ケイスケが姿を現した建物の影から、源泉が出てきた。

「源泉さん」

リンが走り去っていった道を眺めていたケイスケは、源泉に苦笑いを浮かべた。

「リンは?」

「シキに負けて。強くなるって・・・」

リンが消えた先を指差すケイスケに、源泉は煙草に火を点けながら笑った。

「修行ってヤツに行ったのか。動向は知り合いに頼んでおくわ」

「はい」

ポンポン、とケイスケの頭を軽く叩いて、源泉は歩いていく。

その源泉の後ろをケイスケが着いて行った。