周囲を確認しながら歩く源泉の後ろをシキをアキラが付いて行く。
暫く進んで、源泉が建物の角を曲がるのを見て、アキラはシキの半歩後ろを歩く。
「いや〜。待たせたな。珍しいお客さんを連れて来たぞ」
「シキ!」
源泉が誰かに話しかける声と同時に、何者かが叫びながらシキに飛び掛った。
シキは左斜め後ろに居たアキラの腕を掴むと、抱き寄せるようにしながら飛び掛ってきた人物を避ける。
ヒュッ、と何かが空を切る音と共に軽い着地音と、凄まじい殺気。
その殺気を向けられているハズのシキは涼しい顔で源泉が居る方へと歩き出す。
アキラを腕に抱いたまま。
「シキッ!!」
殺気を孕んだままで叫ぶ相手を無視したシキに、アキラは溜息を吐く。
「感動の再会が台無しだなぁ」
シキに飛び掛ってきた相手を知っているのか、源泉がのんびり言うと、シキがフン、と鼻で笑った。
「今日こそ決着を着けてやる!勝負しろっ!」
再び空を切る音と、シキとの挑戦を求める怒鳴り声に、シキは面倒くさそうに振り返った。
「え?・・・り、ん?」
シキの動きに合わせて、一緒に振り返ったアキラは、目の前で肩を震わせるシキによく似た面立ちの金髪の青年の名前を口にした。
「へ?・・・え?・・・アキラ?なんで、ソイツと一緒に居るのさ?」
シキしか見えていなかったらしいリンは、聞えてきた声で初めてアキラが居る事に気が付いた。
「リン。その、刀は?」
アキラはリンが握り締めている刀を見て違和感を覚える。
アキラが知っているリンの武器は、スティレットという細身の独特の形状をした短剣を両手に一本ずつ持っていた。
それが、シキのよりは短めに見えるが、紛れも無い日本刀を持っている。
しかも、シキに飛び掛ったためか、刀身が抜き身。
「答えろよ!」
反応を返さないシキと、その腕の中に居るアキラ。
苛立ちで怒鳴りつけるも、相変わらずシキは無反応で、アキラがそんなシキを気遣わしげに見ている。
「離れていろ」
さり気ない仕草でアキラを後ろに追いやりながら、シキは刀を抜き放ち、鞘をアキラへと放り投げた。
綺麗な狐を描いて飛んできた鞘を片手で受けたアキラに、源泉が揶揄するかの様に口笛を吹く。
「やっと、殺せる」
物騒な台詞を吐くリンを一瞥したシキは、冷たい笑みを浮かべる。
「貴様は俺に勝てん」
シキがリンを見下す様に言うと、リンが地面を蹴った。
「ほぉ」
アキラの隣でシキとリンの勝負を見ていた源泉が関心するほどにリンはシキに対して凄まじい剣戟を繰り出している。
常人ならば受ける事がやっとであろう剣戟を、シキは笑いながら受け流している。
しかも、反撃する余裕があるにも関わらず、反撃もせずに。
見方によっては、一方的な戦いに見える2人の戦いを見ているアキラに近付く影。
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