復興から取り残されかけた街の裏路地で、アキラは偶然に再会した源泉と共に廃墟ビルの壁に凭れ掛っていた。
「相変わらず、鬼気迫るモノがあるなぁ」
関心したような、呆れたような口調と声音でアキラに話しかける。
それもそのはずで。
2人に背を向けているシキは追っ手と思わしき男たちが撃つ銃弾を刀で受け流しているのだ。
それも、全て。
「アレ。遊んでいるだけだ」
壁にもたるアキラの手には鞘に納まったままの刀。
「遊んでいる?」
アキラの言葉に、源泉はシキを指差して確認した。
「ああ。シキがあれぐらいで手こずる訳ないだろ」
さも当然、と言う顔で返しながらも、アキラはシキから目を逸らさない。
「どう言う意味だ?」
アキラの言わんとしている事が解らずに、源泉は訊ねた。
「鍛錬。シキのヤツ、最近の追っ手が手応え無さ過ぎるって言ってるんだ。アイツ等が銃を持ち出さなきゃ一瞬で片付いてた」
確かに、追っ手が姿を現した瞬間、アキラも刀に手を掛けたが、銃を取り出されたとき、シキの雰囲気が変わり、アキラは柄から手を離し壁に凭れたのだ。
源泉が呆れていると、ガチン!と撃鉄が落ちる音と男たちの焦る声が聞えた。
「弾切れか?」
呟く源泉の目の前で慌てふためきながらガチャガチャとマガジンを取り替えようと必死になっている男たちが血飛沫を上げて倒れていく。
最後の1人を切り伏せたシキが血振りをする姿で何が起きたか理解した。
「何時の間に」
凭れていた壁から離れ、シキを凝視する源泉に気付かないのか、アキラがそっとシキに近付く。
「どっちだと思う?」
「賞金の方だな」
アキラの短い問いかけに、シキも短く返す。
「お前さんがたよぉ。その、問いかけはどう言うこった?」
1人、意味が解らない源泉は煙草に火を点けながら暢気に2人へと、問いかけた。
源泉の問いかけに、アキラは困ったような表情を浮かべて、シキを振り返った。
アキラの視線を受けて、シキは大袈裟に溜息を吐くと説明をした。
ナル・ニコルのキャリアーであるアキラを狙う研究施設と、裏で顔の知れたシキを狙うモノたち。
そして、軍が掛けた賞金目当ての賞金稼ぎ。
シキ曰く、追っ手として物足りないのは賞金稼ぎの連中で、アキラを殺せない研究施設関係は退屈。
になるらしい。
裏の連中は形振り構っていないが為に、なかなか楽しめる、と零していたのもしっかりと聞えた源泉。
当然、傍に居たアキラも聞えていただろうが、気にした様子は無い。
「まぁ、いいや。お前さん方。これから暇か?」
シキの物騒な発言を気にしないようにしながら、源泉が笑った。
「暇って…言えば、暇か?」
源泉の笑顔に怯えながらアキラはシキに話しを振った。
瞬きを1回しただけのシキにアキラは頷き返して、源泉に向き直ると頷いた。
「じゃ、おいちゃんに付いて来なさい」
ニコニコと笑顔を崩さずに言う源泉にシキも呆れながらゆったりとした足取りで付いて行く。
そのシキの傍をアキラは歩く。
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