冷たいタオルが額に乗せられる感触でシキは目を覚ました。

「俺はどのくらい寝ていた?」

ベッドに腰掛け、シキの様子を見ていたアキラは壁掛けの時計をチラリと確認してから答える。

「ほんの三十分程です。ご気分はいかがですか?」

アキラの答えに、シキはそっと息を吐く。

「悪くは無い。何かあったら直ぐに呼べ」

目を閉じたままでアキラに言うと、頷く気配。

「では、俺は執務室へ戻ります」

アキラは寝息を立て始めたシキに声をかけてから、仮眠室を出た。

幸いにも、シキの熱が上がる事は無く。

その日のうち熱は下がった。

「熱、下がりましたね」

体温計を確認するアキラにシキは苦笑を浮かべる。

「ゆっくりと寝たからな」

日が沈む前に自室へと移動させられていたシキは、クッションを背もたれ代わりに、ベッドヘッドへと背を預けて座るシキの顔色は昼間より、良くなっている。

「悪化しなくて良かった」

緊張が解けたのか、ほっと胸を撫で下ろすアキラをシキは眺めていた。

「お前は平気か?」

シキ並に忙しいアキラも休息は十分ではなく。

今回は珍しく、シキが体調を崩しただけ。

「俺は、まだ平気です」

体温計を仕舞いながら、アキラは自室へと戻ろうとした。

「アキラ。来い」

アキラへと手を伸ばすシキ。

「…熱が下がっただけでしょう?無理をしてはぶり返しますよ?」

シキの体を心配してのアキラの発言に、シキは唇の端を吊り上げて笑った。

「今日は何もしない。隣で眠れ」

暗に、抱き枕になれ、と言っているシキの言葉にアキラが逆らえるはずも無く。

「本当に、何もしないんですね?」

アキラは念押ししながら、シキのベッドに入った。

横になったシキの隣に並んで横になると、シキの腕が伸びてきて抱きすくめられる。

「シキ。おやすみ」

アキラはシキから返事が返らないのを承知で、声をかけて目を瞑った。