『碧い湖面』
暗い…暗い闇の中。
俺は、ユラユラと揺れる湖面の上に立っているような感覚なのに歩けない…足が動かない。
足元の湖面の揺らぎが大きくなる度に何かが聞こえる。
いや、響く。
『 』
誰かが…誰かを呼んでいる?
誰が?誰を?
それは不定期に、だが絶えず繰り返される。
徐々に湖面の揺らぎが大きく、声がはっきりとしたモノに変わる。
『シキ』
俺の名前。
この闇に捕われてから、忘れていた…聞くことの無かった己の名と、声。
誰の声だ?俺を呼ぶのはダレダ?
貴様は誰だ?
日増しに強く、よく聞こえるようになる声。
『シキ。逢いたい』
あぁ。思い出した。
アキラの声だ。
そして…ゆっくりと俺は歩き出す。
もう少しだ。
もう少しだけ。
いい子で我慢していろ。
かならず戻る。
………アキラ……………
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