シキがバスルームに入ると、先にアキラがシャワーを使っていた。

当然のごとく、全裸でお湯を浴びるアキラの姿をシキは戸口で眺めているが、アキラは気が付かない。

戸口にもたれ掛かり、腕を組んでシャワーを浴びるアキラを眺めるだけで、行動を起こさないシキ。

シャワーを止めて、頭を振って水気を飛ばしたアキラは、視界の端に立ち尽くす黒尽くめに気が付いた。

「し…き?」

背中を向けたままで、アキラは恐る恐ると声をかけた。

「フッ。どうした?」

背中を向けたままだったが、アキラはシキが嫌な笑みを浮かべたのを察した。

「なんでもないっ!俺は終わったから、使えば?」

近くに置いてあったタオルを引っ掴むと、アキラは小走りでシキの傍を抜けた。

シキもアキラの行く手を妨害する事なく、アキラはバスルームから出て行った。

アキラを見送ってから、シキはコックを捻ってお湯を出してから、服を脱いだ。

ワシワシと、頭を拭きながら、シキがバスルームから出てきた。

「…雨、止まないな」

「今日は外に出るのは諦めろ」

窓の外を眺めていたアキラは、シキに呟いた。

「暫くは…出掛けない」

俯いたアキラの様子が変な事に気が付いたシキは、アキラを背後から抱き締めた。

シキの匂いに包まれたアキラは、肩の力を抜いてシキにもたれ掛かった。

「どうした?」

アキラの珍しい行動に、シキは笑いながらもアキラの好きにさせている。

「なんでもない」

「そうか」

アキラはケイスケに僅かな罪悪感を感じつつも、シキに対して安心感を抱く自分が居る事を理解していた。

安心しきって、シキにもたれ掛かるアキラに、シキは何もせずにただ抱き締めるだけ。

シキはアキラに悪戯をすることなく、どしゃ降りの中を走って戻って来たために疲れていたアキラはそのまま眠ってしまった。

「寝たのか?」

シキの囁きに、身じろぎもせず静かな寝息だけが聞こえる。

アキラを抱き締めていた腕を緩めて、体の向きを直すと、ベッドに横たえシーツを掛けてやる。

サラサラと、アキラの前髪を手で梳いたあと、シキは足音を立てずに、部屋から出て行った。

雨は、止んでいた。