ギシリと、軋む音と衣擦れの音が聞え、瞼を開けるとギリギリまで明るさを絞った照明が目に入った。

バサリとコートがなびく音に、顔を向けると、革のコートを羽織ったばかりのシキの背中が見えた。

「起きたか。まだ早い。寝ていろ」

振り返らずに、アキラに声をかけるシキ。

「…シキ。何処に行くんだ?」

ゴロリと、体の向きを変えたアキラに、シキは視線だけを投げて寄越した。

「お前は気にせずに寝ていろ」

アキラの返事を待たずに、シキはさっさと出て行ってしまった。

アキラはシキの突拍子の無い行動に慣れ始めていた為に、特に気にも留めずベッドから抜け出ると、汚れた体を綺麗にするべくシャワールームに向った。

シャワーヘッドから熱めにした湯が降り注ぎ、アキラの体を温めていく。

閉じた瞼に、蹲ったままで身動き一つしないケイスケの姿が浮かんだ。

アキラは頭を横に振ると、お湯から水に切り替える。

折角、温まった体が冷たい水によって再び冷えていくのを構わずに、アキラは水を浴び続けた。

シキが戻って来た事にも、気付かずに。