−Side AKIRA−
バシャバシャと足元で泥水が跳ねて、雨は容赦なく降り続く。
アキラは1人で走っていた。
「はぁ、はぁ。…っつ」
右手に刀を持ち、左手は壁に手を着く。
「シ…キィ」
名前を呼ぶが、応えが返るどころか気配すらない。
まだ雨が小降りだった頃に複数の追っ手…シキを狙う者達とアキラを狙う軍関係者達をそれぞれに担当して切り伏せて行くうちに、アキラはシキから引き離されていた。
そのことにアキラが気が付いたトキには既に遅くて、どれだけ探ってもシキの気配を近くに感じない。
「はぁ。どれだけ離されたんだろ」
とりあえず、離された場所まで戻ろうと、走り出したところで雨足が酷くなった。
風も加わって、視界が狭くなり走りづらいこと、この上ない。
引き離された場所に苦労して戻ってみれば、シキの姿は無く、屍だけが転がる。
「シキ…?」
思わず『置いて行かれた』と思ったが、その思考を頭を振って追い払う。
だが、不安は募る。
シキが目覚めて半年。
行動を共にする事を咎められた事はないが、気紛れな相手の事。
無言で置いていく…という事も考えられる為に、アキラは不安になるのだ。
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