源泉とリン、ケイスケを乗せた車とは別の車に、アキラはシキの後に乗り込む。

数台の車はスムーズ発進し、城に到着。

シキはアキラを伴い謁見室に移動すると、源泉だけがそこにいた。

「アキラ」

源泉に名を呼ばれ、アキラは一瞬だけ相手を見たがすぐに視線をシキに戻す。

「さて。貴様に聞きたい事がある」

室内の上座にあるイスに座ったシキの隣にアキラは控え、シキは源泉に視線を軽く投げると話しかけた。

「聞きたい事?テログループについてなら答えるつもりはないなぁ」

シキを目の前にして軽い調子の源泉の態度に、アキラは表情にこそ出さないが驚いていた。

「そんな事ではない」

「?…じゃあ何だ?」

おちゃらけで誤魔化した源泉にシキは即答し、源泉は反問する。

「ニコルについて知っている事全てを話せ」

「嫌だ…と言ったら?」

「共に捕らえた2人がどうなるかは、貴様次第だ」

謁見室とは別の部屋に連れて行かれたリンとケイスケ、2人の安否は源泉の返答次第とシキは言う。

その事を理解した源泉は悔しそうに顔を歪める。

源泉がチラリとアキラを見やると、表情を変えずにシキの隣に控えている。

「ニコルについて…知ってる事を話せば、あの2人だけでも自由にしてくれるのか?」

「アキラ。どう思う?」

源泉の訴えにシキはアキラに意見を求めた。

「あの2人にも尋問の必要はあると思いますが、おそらくはトシマで流れていたライン以上の情報は知らないかと」

アキラが簡潔に答えるのを、源泉は別人を見るような目つきで見ていた。

「そうか。で、話す気があるのか?」

アキラの意見に頷いたシキは、源泉に再度質問をした。

「…ラインの原料はニコル。そのニコルはある男の血液に潜むウィルス……そのウィルスと対をなすウィルスが非ニコル。ニコルの保菌者は現在は生死・行方不明。非ニコルの保菌者は…アキラだと言う情報があった…俺がニコルについて詳しいのは、研究所に居たからだ」

シキの問いかけに、源泉は知っている事を簡潔に答えた。

「そうか………アキラ。こいつを独房に連れて行け。あの2人の尋問は任せる」

源泉の返答を聞き、シキはアキラに指示を出すと部屋から出て行った。

「…誰か、こいつを独房に連れて行け。一緒に連れて来た2人は何処だ?」

アキラは近くに居た者に指示を出すと、リンとケイスケの居場所を尋ね、聞かれた者も質問に淀みなく答えた。

「アキラ!!リンとケイスケは本当に、何も知らないんだ!!助けてやってくれっ」

源泉は2人の軍人に押さえ込まれながらも、リンとケイスケの心配をし、部屋から出て行こうとしたアキラに叫ぶ。

「……決めるのは総帥だ」

アキラは振り向かずに言うと、歩いていった。