突然現れたテログループとの銃撃戦。
その最中、煙幕で視界が塞がれたアキラは後頭部を殴られて気絶した。
「…うっ……」
「お?目が覚めたか?」
僅かに呻いたアキラの耳に、聞きなれた声が聞こえた。
「おっさん?」
殴られたために痛む後頭部を押さえながら、アキラはゆっくりと起き上がり、話しかけてきた相手を確認する。
「おう。後頭部は大丈夫か?悪かったな。焦ってたから手加減できなくてな」
煙草に火を点けながら言う。
「どうして、おっさんが?」
「ん〜。今回のテロは俺たちが計画したからな」
アキラの疑問に簡単に答える源泉。
「一体、どういうことだ?」
「詳しい説明をする前にな、紹介したいヤツがいる」
源泉の言葉に、1人の青年が入ってきた。
金髪で、どこかシキに似た雰囲気のある青年に、アキラは見覚えがある感じがした。
「久しぶり。アキラ」
顔を見せた青年。
「リン?」
その顔にかつての知り合いの面影を見つけ、信じられない気持ちで名前を呼ぶ。
「当たり。あと、もう1人。入って来いよ」
リンに促されて、現れた青年。
「け、ケイスケ?」
その姿にアキラは驚きの余り、動けなくなった。
「久しぶり。アキラ。元気?」
「ケイスケ。アキラは今は後頭部が痛いと思うよ?」
ケイスケの話しかけ方にリンがすかさずツッコム。
「あ、そっか。ごめん、アキラ」
「生きて…た、のか」
アキラはケイスケの声が聞こえていないのか、呟く。
近くに居たために、アキラの呟きが聞こえた源泉は煙草をもみ消す。
「あ〜。どしゃ降りの日に、路地裏で見つけたんだ。そんトキは死んでるかとも思ったが、辛うじて息があった。ま、奇跡に近いけどな」
「アキラ。俺はね、兄貴に挑んで負けたんだ。兄貴のヤツ、きちんとトドメを刺さなかったから。おっさんに発見されて、助かっちゃった」
源泉がケイスケの事を説明して終わると、リンが片足を摩りながら自分自身に起きた事を説明した。
「そうか」
俯いて静かに、納得するアキラ。
「アキラ。とりあえずは、着替えろよ」
源泉からTシャツとジーンズを渡されて、アキラは躊躇いがちにシャツを脱ぐ。
「あれ?」
もそもそと着替えるアキラを眺めていたリンが、変な声をだす。
「リン?どうしたんだ?」
「アキラ…それ、ピアス?」
アキラに問われ、リンはアキラの臍の辺りを指差す。
「え?アキラ。それ何?トシマに行くまでは無かったよね?」
リンの指差す方向を見て、ピアスに気が付いたケイスケがアキラに聞く。
「あぁ。シキに貰った」
Tシャツを着ながら、アキラは軽く答える。
「アキラ。着替えている最中で悪いが、本題に入らせてもらうぞ」
「本題…そうだな。何故、おっさん達がテログループに参加してるんだ?」
源泉の言葉にアキラは瞬時に頭を切り替える。
「それぞれ理由があるんだけどね。一つだけ、共通の目的があって」
「共通の目的?」
「アキラをシキから奪還する」
「どういう、意味だ?」
リンとケイスケの説明ではいまいち理解できない。
「アキラ。ケイスケから聞いたんだが。お前さん。トシマに来た理由は、『警察との取引で、イル・レを倒す事』なんだろ?」
「………」
源泉の言葉に無言で肯定するアキラ。
「アキラ。シキが『イル・レ』だ」
「知ってる。シキから聞いた。でも、シキは『麻薬王の座に興味は無い。あの変態男が勝手にそう呼んでるだけだ』って言ってた」
イル・レの正体を話す源泉にアキラは、シキに言われた事を話す。
「知ってた!?じゃあ、なんでシキの元にいるんだよ?」
叫ぶリン。
「アキラ?トシマで何があったんだよ?」
心配気に聞くケイスケ。
「麻薬王に興味が無いって言ったヤツが、『ライン』で兵士を強化して、軍を立ち上げるのは変だろう」
「シキは麻薬王じゃない」
源泉の質問に、アキラは短く答える。
「アキラ!!」
「今回の事は見逃してやる。だから、俺を城に…シキの元に帰してくれ」
「今は無理だ」
アキラの希望を源泉が却下した。
「何故、無理なんだ?」
源泉に却下されて、不思議そうに聞き返す。
「リン。ケイスケも。アキラと2人だけで話したい事があるから」
「判った」
源泉の言いたい事を察したリンが、ケイスケを引き摺って部屋から出て行く。
「おっさん?」
「アキラ。お前さんに聞きたい事がある」
真剣な顔をした源泉。
「非ニコル…聞いた事はないか?」
「……例え…知っていたとしても、シキの不利になる事を俺が言うとでも?」
アキラは言い放つと、今までに見た事も無いような、表情を見せた。
「アキラ」
ソレを見た源泉は背筋が凍る思いをした。
源泉との話しの後、アキラは雑談には応じるが、軍やシキの事は頑なに話さなかった。
そうして一週間はあっという間に過ぎ去った。
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