それから数日が経ち。

2月12日。


バレンタインデー前々日。

兵士の落ち着きの無さがピークに達して。

我慢が出来なくなったアキラはシキに訊ねた。

「今月に入ってから、兵士の落ち着きが無くなっています。総帥は心当たりがあるのですか?」

「心当たりはあるが。アキラ。お前は知らんのか?」

午後のお茶の時間。

淹れたてのコーヒーにバタークッキー。

シキはブラックで、アキラは砂糖少しにミルクを足したコーヒーを飲みながら。

シキに、知らないのか?と聞かれ、アキラは考えるが皆目見当が付かない。

「申し訳ありません」

素直に謝ると、シキがフッと笑った。

「構わん。2月14日はバレンタインデーと言ってな。好きな相手にプレゼントをする日だそうだ。プレゼントは主にチョコレートだと聞いたことがある」

とシキはアキラに説明をする。

「チョコをプレゼント…ですか?」

「そう聞いたことがあるだけだ。貰ったことはないし、欲しいとも思わん」

最後の一口を飲み干して、シキは立ち上がる。

アキラも慌てて飲み干して、カップ類を片付けてから立ち上がる。

「今日でこれでは、当日はもっと騒々しいだろうな」

楽しそうな響きでシキは言う。

「騒々しいのは、我慢できますが。警備を怠るのは困りますね」

「フッ。お前が教育したのだろう?この程度の行事で警備が手薄になるとは考えられんな」

シキにここまで言われては、頷くしかない。

「はい」