はらり、ひらりと薄紅色の花弁が舞い散る様子を縁側から眺めている人が2人。

「今年も桜は見事に咲いたでござるな」

「綺麗に咲いてよかったねぇ」

幸村の呟きに佐助が同意する。

「政宗殿は今頃、何をしているでござろうか」


「俺がどうしたって?」

桜を見ながら、何気なく呟いた幸村に思いもよらない所から声が返ってきた。

「政宗殿?」

幸村が声がした方を見ると、大きな風呂敷き包みを持った政宗と小十郎の姿。

「HEY!幸村。元気だったか?」

爽やかに、片手を挙げて挨拶をする政宗の後ろで小十郎が頭を下げた。

「小十郎さん!お久しぶりぃ〜」

政宗の突然の登場に、固まっている幸村の傍で佐助が2人に向って手招きをしている。

「ま、政宗殿!?何故ここに?」

「何って・・・信玄公から上田城の桜が綺麗に咲いたって文を貰ったから、花見をしようと思ってな。弁当と甘味を作ってきたぜ?」

幸村に説明しながら縁側に歩み寄る政宗と小十郎。

「お館様から文が?・・・だが、しかし・・・・・・」

悩む幸村の傍で佐助がいそいそと座布団とお茶を用意している。

「悩まずに楽しめよ。大体、忍のヤツはやる気満々みたいだぜ?」

政宗が笑いながら指を指すと、幸村がその指の先を辿り、いそいそと動く佐助の姿を見て幸村は呆気に取られた。

「さ!準備は万全だよ!!取り皿も取ってきたし。お茶も淹れたよ〜」

「佐助!!」

「旦那?折角だから楽しみなよ」

いい笑顔で言う佐助は政宗から重箱を受け取っている。

「むぅ〜」

「幸村?」

子供のように頬を膨らませて不貞腐れている幸村に、政宗は優しく話しかけた。

「公務でいらしたので?」

ぶすっとしたままで返す幸村の態度を気にすることなく政宗は、笑いながら答える。

「ちげぇよ。純粋に、アンタと花見がしたいだけだ。それに、こっちに来る途中で謙信公に会ったぜ」

小十郎が持っていた風呂敷きには沢山の団子。

それを取り皿に取り分けて、幸村に差し出す小十郎と、さり気ない仕草で新しいお茶を注ぐ佐助。

「謙信公に?一体何事でござろうか?」

ことり、と首を傾げた幸村に、お茶で一息いれていた政宗は桜を眺めながら答えた。

「信玄公の所に花見をしに行くって言っていたぜ?団子を分けてやったら、喜んでいたな」

政宗と幸村が話をしている間に重箱を広げた佐助がお箸を差し出した。

「ほら、旦那。ご飯まだだったし。ちょうどいいじゃない」

ニコリと笑う佐助から箸を受け取った幸村に、小十郎が取り皿を渡す。

「弁当も団子も俺が作ったから、味は保障するぜ」

幸村と同じように箸と取り皿を持った政宗に、幸村は視線を向けた。

「これ、全て政宗殿が作ったでござるか?」

驚く幸村を他所に佐助は重箱から食べたいものを取り皿に移している。

「前日から準備していましたからね」

小十郎も幸村に答えながら、取り皿に食べ物を移していく。

「遠慮しないで沢山食えよ」

政宗は自分の取り皿に一通りの食べ物を載せると、幸村の皿と取り替えた。

「「「「いただきます」」」」

四人の声が綺麗にハモった。