春先のある日、一通の文が届いた。

『熱を出して、寝込んでいる』

簡潔に書かれたその文を読むや否や、その人は慌ただしく旅支度をすると共を1人連れて馬を飛ばした。

休む暇なく馬を走らせて、辿り着いた目的の場所。

門番とは既に顔見知りの2人で、顔パスで門を潜ると、案内を必要とせずに部屋へと向う2人。

前触れ無く現れた2人を迎えたのは、寝込んだ人と、その看病をする人。

看病をしていた人は、突如現れた2人を見て、安心しきった表情を見せると、部屋を出た。

見舞いにと、突撃してきた2人のうち、1人は室内へ。

もう1人は部屋から出た人と2人、連れたって移動した。

「大丈夫…じゃねぇから、寝込んでいるんだったな」

寝込んでいる人の隣に座り、額の手拭いを取って、水の張られた桶に浸してから強く絞り、額に乗せなおした。

「ふへ?」

冷たい手拭いが乗った感触で目を覚ましたらしい相手と目を合わせると、相手が目を見開いた。

「ど、どうして?」

掠れた声で訪ねれば、心配そうな表情を浮かべた相手が、優しく答えた。

「寝込んでるって、文が届いたんだ。気分はどうだ?」

「そっか。心配掛けてごめん。一応、薬は飲んだから」

まだ喋るのも辛いのか、ボソボソと喋る相手。

「水。飲むか?」

「今は、いいや」

言いながら、手を伸ばしてくる相手の手を握ってやると、相手は安心したのか瞼を閉じた。