「雪でござるー!」

甲斐よりも北に位置する奥州は、甲斐より冬が早い。

冬先に遊びに来た幸村の滞在中に、雪が舞い始めた。

段々と積もっていく雪に、幸村ははしゃいでいたが、政宗は空を見上げると浮かない顔をした。

「幸。中に入れ」

「何故でござるか?」

政宗に言われて、キョトンと首を傾げる幸村。

「風が強くなってきたからな。もうじき吹雪く」

政宗は簡単に説明した。

「はい」

渋々といった感じで部屋に戻った幸村の手を、政宗が引いて火鉢の傍に座らせた。

「寒くないでござるよ」

「アンタなぁ。雪で遊んでて、手が冷えてんだろうが」

幸村の主張に、政宗は呆れた。

「旦那ーっ!」

スッパーンと勢いよく障子が開けられたかと思えば、静かに閉められる。

「・・・忍。雪が積もってんぞ?」

乱入者は幸村に仕える猿飛佐助。

肩と頭にうっすらと雪が積もっている。

「いや〜。本格的に吹雪く前に着けてよかったよ。ハイ。これ、大将から」

ニコニコと笑みを浮かべて、懐から文を取り出すと政宗に渡した。

「忍。湯殿に行け」

「え?湯殿?」

「あぁ。この時期は何時でも入れるように、常に沸かしているからな」

「じゃ、お言葉に甘えて」

政宗の言葉に佐助は、クルっと踵を返すと。

「小十郎さーん!一緒に湯浴みしよー」

叫びながら出て行った。

「さ、佐助!?」

「いいんじゃねーか?」

驚いて思わず声を出した幸村に、政宗は笑いながら答えた。

「しかし・・・」

「俺たちも、後で一緒に入ろーぜ」

ニタリ、と笑う政宗の顔を見て、幸村は一瞬で真っ赤になった。

「そ・・・そのような・・・・・・お、お館様からの文には何と?」

必死に話題を逸らす幸村。

政宗がパラリと文を開いて・・・溜息を吐いてた。

「アンタら。この冬は此処で過ごしな」

言いながら政宗が文を幸村に見せると、幸村が固まった。