「某の身柄と、佐助の行動制限?それだけでござるか?」

内容に呆気に取られる幸村。

「それだけ、って旦那?」

幸村の言い方に、佐助は呆れた。

「それを呑めば、同盟が成り立つのでござろう?何を悩む必要があるのでござるか?」

「旦那?同盟の条件、ちゃんと理解してる?」

「うむ。某が此処で大人しくしている間は同盟していてくださる・・・という事でござろう?」

「その通りだが。幸村よ。良いのか?」

「この、真田幸村。それが同盟の条件ならば、呑みましょうぞ」

力一杯、主張する幸村に、佐助は何も言えなくなった。

「じゃあ、大将を送ったら、戻ってくるから」

幸村の決意を聞き、信玄は政宗と同盟を結んだ。

「うむ。お館様を頼んだぞ」

甲斐に向け、城を発つ2人を見送ってから、幸村は城内に戻った。

「よぉ」

「政宗殿」

小十郎に連れられた幸村が通されたのは、政宗の執務室。

幸村を案内すると、小十郎は直ぐに下がった。

机に向かい、筆を走らせる政宗の正面に幸村は座った。

「政宗殿。某は何をすればよいのでござるか?」

チラリと幸村を見て、政宗は筆を置く。

「ha〜。今、小十郎にアンタの部屋を用意させている」

「そうではござらん」

「すること・・・ねぇ。俺の稽古に付き合え。それ以外は好きにしな」

「稽古?それだけ?」

「それだけ、だ」

「ただ、それだけの為に・・・同盟を?」

「『それだけ』か・・・俺はアンタに興味がある。だから、だ」

「某に『興味』とは?」

「『興味』は『興味』だ」

幸村に告げた政宗の言葉に偽りは無い。

ただの『興味』それだけ。

ただし、その『興味』がどんな感情から来るモノなのかを、政宗は知りたかった。

だから、同盟の条件を『幸村の身柄』にしたのだ。

しかも、幸村も少なからず政宗に『興味』があった。

だから、告げられた条件を呑んだ。

互いの『興味』から始まった、甲斐と奥州の同盟。

それは、信玄が驚くほど順調に、佐助が呆れるほど平和に続いた。



『興味』の果ての2人の関係が変わっても。