茶屋での偶然の再会から、数週間後。

幸村は武田信玄の供として奥州の伊達政宗の居城を訪れていた。

客間に通されて、信玄の斜め後ろで落ち着きなくソワソワしている幸村を信玄が一括した。

「幸村よ。大人しくせんか」

「はっ・・・申し訳ございませぬ」

「旦那。落ち着きなさすぎ」

忍らしく、最初は隠れていた佐助は、客間に通された瞬間に小十郎に見つかり、仕方なく幸村の後ろに控えている。

佐助は、その瞬間を思い出して、気落ちしていた。



「こちらで、暫くお待ちください」

客間の障子を開けて控えている小十郎の前を、信玄と幸村が通り過ぎ、佐助も天井裏から忍び込もうとした瞬間だった。

「おい。武田の忍。其処に居るのは判っている。出てきたらどうだ?それとも黒脛布に捕らえられたいのか?」

「っ〜〜〜!!」



そして、今に至る。

「(悔しい。気配も消したし、音も立てなかったのに!!あの状況で、目を合わせてくるなんて!!)」

内心はどうであれ、佐助は表情だけは平静を保っている。

「政宗様が参りました」

小十郎の言葉に、障子が静かに開かれる。

「待たせたな」

客間に入ると、政宗は迷わずに上座へと腰を下ろした。

「信玄公。此度の訪問は何事だ?」

「単刀直入に言おう。小競り合いにしかなぬ戦をこれ以上は続けられぬ」

「確かに・・・で?わざわざ、甲斐の虎が奥州まで『ソレ』を言いに来たって訳では、ないだろう?」

隻眼が睨むは、信玄の後ろに控える幸村、ただ1人。

信玄も、佐助も、政宗の視線が誰に向かっているかなど、百も承知。

「同盟を組みたい」

信玄は政宗に、静かに継げた。