∴仁王に憑依


※仁王憑依
※入れ代わり可能


「おい、仁王。いい加減に起きろぃ」
『ん……?』

屋上でのんびり雅治と昼寝をしていたら、誰かに無理矢理起こされた。気持ち良かったのになぁ…。そんなことを考えながら若干寝ぼけて目を開ければ、そこには雅治と同じ部活仲間の丸井が呆れた表情で私の顔を覗き込んでいた。
珍しいことにいつも人の気配に敏感な雅治は、まだ意識を眠らせているらしい。仕方ないので、私は雅治の代わりに体を起こした。いつも部活で疲れているし、少しくらい休ませてもいいだろう。なんて甘い考えを頭に浮かばせながら。

『なんじゃ丸井。せっかく人が気持ちよく寝とるのを邪魔しおって』
「気持ちよく、ってなぁ…。もう放課後だぜ?どんだけ寝てるんだよぃ」

もうすぐ部活が始まるぜぃ、とガムを膨らませながら言う丸井に私は驚いた顔で見た。
放課後って、要するに昼から約三時間もここで寝ていたことになるじゃないか。
どんだけ寝てたんだよ私たちは。

『もうそんな時間になっとったんか』
「おう。丸井サマに感謝しろよぃ」

偉そうに笑う丸井を軽くあしらって、私は教室に戻ることにした。まだ荷物は全部あそこに置きっぱなしだ。下手すればラブレターが入れられている可能性だってあるのだから。
私が憑依している雅治はイケメンだ。本当に、私と同じ人間か、っていうくらいにだ。だからラブレターだって差し入れだって、冗談みたいに貰うのだ。
教室に戻る道すがら、私はまだ寝ている雅治に話し掛けた。

『(雅治ー。まーさーはーるー。起きて、もうすぐ部活だよー?)』
「(……ん?もうそんな時間か?)」

寝ぼけたような声が頭に響く。
何も言わないと思っていたら、どうやらまだ寝ていたらしい。

『(寝起きだけど参加しなくちゃダメでしょ?ほら交代だよ)』
「(うぅ…まだ眠いのぅ…。今日は遥がやってくれんか?)」
『(………雅治。部活くらいちゃんと――)』
「(遥…、やってくれんのか?)」
『(……ゔ)』

私がその声に弱いとわかっていての行動だ。
確信犯だった。



そして今、私はコートにいる。

『あぁ帰りたい…』
「やあ仁王、ちゃんとサボらずに来てくれたみたいだね」
『っ!?』

ぽつりと呟いたその瞬間に、後ろから声を掛けられた。振り返るまでもない。我らが部長、幸村様である。
…正直なところ、私は彼が苦手だ。
なにもかもを見透かされそうな目に、掴み所がない飄々とした性格、鋭い観察力。さすが個性的なメンバーをまとめる部長と言ったところか。身に纏う空気が違うのだ。
内心冷や汗をかきながらも、私はポーカーフェィスを保ったまま幸村に言い返した。
詐欺師に憑依してる私がヘマをすることは許される訳がないんだから。プライドだプライド。

『……幸村。いきなりで驚いたナリ』
「ふふ、そうだろうね。でも仁王が驚くなんて珍しいな、…何か考え事かい?」
『いや…、ちと最近の睡眠時間を思い出しとっただけじゃ。特に問題はなか』

そっぽを向いて適当にはぐらかした。まぁ最近やけに仁王は寝ているので、あながち間違ってはいない。ちなみに理由は分かっているから大丈夫だ。

「ふうん…、そう。ならいいや。じゃあ試合をしようか」
『――誰とじゃ?』
「うん?決まってるじゃないか」

ふふふ、と笑う幸村に悪寒が走ったのは気のせいではないだろう。

そして部長は私を半殺しにさせるお言葉を宣ったのであった。


「俺とだよ」




----------
仁王と憑依したかったんです。
だって仁王だよ仁王!
ベ様バースデーなのにすいません。
ちなみに仁王はへたれじゃありません。幸村も黒くはない…はずだったんだけど、なぁ……。
何 故 こ う な っ た し
幸村と話しているとき仁王は寝ています。だから無反応ですよ。

多分続きを書くかもしれない代物。



prev top next
×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -