並盛 (1/2)

澄織が京都を出てから数日、澄織の想像通り、マンションの最上階で寝食をしていた。もっと言えば、最上階全てのフロアなのだが、流石にこんな広いのは慣れていないため、エレベーターに一番近い部屋で暮らしている。
ちなみに、料理を含む家事は全て自分の力でこなしていた。
料理は殺人的な物を作る人が一人、家族の中にいたので、それを阻止するために自然と上達していたし、家に常に棲んでいる人が舞織と自分しかいないため基本的な事は出来ていたのである。
まあ、それはさておき、今日は入学式。
澄織は一人鏡の前でくるり、くるり、とスカートを揺らしていた。

「ふふふ、今日は待ちに待った入学式だね…!これから楽しみだなぁ…、友達は零崎だから作れなくてもいいけど、授業とか凄く興味があったし!…お弁当の昼ご飯も楽しそう! レッツエンジョイスクールライフ! だね!」

そんなことを言っておきながら、ふと時計を見るともう家を出る時間になっていた。
慌てて澄織は玄関に向かう。

「しょ、初日から遅刻は流石にマズイよ!」





あれから家を出て走り、澄織はなんとか並盛中学校に着いた。
正門の前で、走って乱れた髪を整えているとき、ふと理由も無く周りを見渡した。

「……」

そこには親子で仲良く話している人たち。
澄織は今日が入学式だと家族に知らせはしたが、同伴は希望していなかった。
零崎、裏世界に生きるものとして、そんな簡単に表をうろうろできる訳ではないし、いつ復讐として襲われるが分からない。
それは仕方ない事として割り切っていたが、流石に目の前にすると寂漠感があった。
と、そのとき、

「なーにしてるっちゃ。早くしないと始まるっちゃよ」

聞き慣れたラムちゃん口調の人の声。
後ろを振り返ると、スーツ姿の軋識がいた。
その口調でスーツ姿なのが、残念なほど合っていない。

「…なんで、アス兄がここにいるの?」

思わず、声が裏返ってしまった。
入学式のことを知らせたのは昨日の夜だ。ならばいつこの家族はここにやって来たのか。
軋識は聞き慣れた笑い声と共にそれに答えてくれた。

「きひひ。驚いた顔をしてるっちゃな。元《チーム》にいた俺を嘗めるなちゃよ」

そうだ。この人は昔、世界中を揺るがしたサイバーテロリストのメンバーだった。
入学式のことなど事前に予定に組んでいたのだろう。
そういえば、

「他の家族は?」
「…来て欲しかったっちゃか?」
「やっぱりいい」

ものすごく遠慮したい。
特に双識辺りはいただけない。
舞姉くらいならまだましなのに。




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