態度不遜 (1/3)

「普通って何だろうね」
「平和で埋没的なものだよ」
「俺は普通が欲しいよ」
「うん」
「こんなめちゃくちゃな生活なんて、いらなかった」
「うん」
「前は平和だったのに」
「うん」
「…早く普通の日常が帰ってきてほしいよ」
「本当に?」
「え?」

碧色の瞳が見つめてくる。
それは珍しく色であるはずなのに、何故か目立つことなく彼女はクラスに学校に紛れている。
当たり前のことで、誰も疑問を抱かない。
まるで日常。
まるで平常。
自分が望む平和そのもの―――、

「本当に日常を望んでるの?」
「そんなこと――!」
「現状が嫌ならもっと拒否するはずだよ?」
「だって、やっても……」
「無理だった?大して努力もしてないのに?」
「う、……」
「本当に沢田くんは日常が好きだったの?」
「……」
「本当に沢田くんは今を嫌っているの?」
「………」
「ねぇ、沢田くん」
「…………」

本当は、非日常を望んでいたんでしょ?

碧色の瞳が見つめてくる。
彼女からの問いに、俺は何も言えなかった―――。



*


球技大会当日。

澄織の出場するバスケは早々に終わった。理由は簡単。他クラスの全チームと一回ずつ戦うのだが、一学年三クラスづつしかないからである。
それはバレーボールにも言えるのだが、試合時間が定められていないので、結果的にはそうなったのだ。

澄織は特に予定もないので、バレーボールの試合が行われている体育館に向かった。ここからでも十分応援の声が聞こえる。
入口をひょいと覗くと、やはり生徒たちが試合をしていた。

「あ、澪、来たんだ」
「先に消えたのはどちら様」

花が入口付近に立っていた。
同じチームのはずなのに、彼女は澄織をおいてさっさと消えてしまったのだ。それに気がつくまで、一人で少し動揺してしまったなんて秘密。
薄情者め。
澄織の言葉に花は苦笑いをして答える。

「ごめんごめん。なんでも《あの》沢田が試合に助っ人として出るらしくてさ、」

だから気になったのよ、と花が指さす方に視線を向けると、今まさにボールを取り損ねて転んでいる彼の姿が見えた。
おかげで体育館はブーイングの嵐で一杯だ。味方からも笑われている始末。

「全然だめだね」
「そうよねぇ…、まあ期待していたから、裏切られた気分だわ」

呆れたように溜め息をついて、花はすたすたと体育館から出ていく。
その際ぱさりと掻きあげられた髪が綺麗に広がった。
予測できていた行動なので、澄織は驚く様子もなくそんな花に話しかける。

「あれ、もういいの?」
「だって、こんなんじゃ結果が目に見えているじゃない。教室にもどるわ。澪は?」
「わたしはまだ見てるよ。わざわざ来たからね」
「そう。じゃあまたね」
「うん」

あ、また沢田が転んだ。
あの剣道の件は、ドーピングか何かだったのだろうか。まるで漫画のような人だ。
あれでは情けなさすぎて他のチームメイトが可哀相になる。

「んん…?殺気?」

どうやら、そう思ってるのは澄織一人ではなかったらしい。ちりちりと微弱な殺気を感じた。
全くもって、いい迷惑だった。
感化されて惨殺をしてしまいそうだ。
まぁそんなヘマは絶対にしないけれども。

体育館を出る直前に、一瞬、銀色の煌めきを見た気がした。







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