態度不遜 (3/3)

あれから昼休みになるまで、人知れず我慢大会が続けられていた。
微弱な殺気の篭る教室と、殺人衝動を抑える澄織。
軽い拷問だった。

「うぅー……、オペしちゃうよ…」

教室を出たかったが、出るとそれはそれで雲雀に追いかけ回される。それは疲れるし面倒だ。
というより何故自分はこんなに辛い目に遭っているのだろう?学校に通っているからか、当たり前だね。じゃあなんで学校に通っているんだっけ?あれ、確か自分から言った気がする…。レン兄には少し反対されたっけなぁ…。
……って、そうか、これは自業自得なのか。

自己完結させて、力無く机に顔を伏せる。授業など当の昔に放棄していた。今更、目立つ目立たないなどということなど気にはしていない。
後十三秒したら解体してやる、と勝手に決めてカウントダウンを始めた。三秒多いのは澄織の気まぐれによるものだ。

―…ごー、よーん、さーん、にー、い―…キーンコーンカーンコーン―――

…昼休みを告げるチャイムが鳴った。
人知れず行われた学校の危機は、かくして一定時間になると鳴るようにプログラムされている機械と澄織の気まぐれによって回避されたのであった。
自分の命を失いかけたことなど露ほども知らずに、生徒たちは自由に話し出す。――その中に、先程の転校生は含まれていなかった。ついでにダメツナこと沢田も。


*


「身にあまるやわさだぜ」

澄織が今日は気分を変えて裏庭で昼食――と考えて行ったところ、そこは修羅場だった。
ダイナマイトがあたりに飛び散り、ドカンと爆発している。こんなに騒がしいのに何も気がつかない並中生はある意味素晴らしいと思う。まるでご都合主義の世界だ。
見つからないように校舎の曲がり角に姿を隠し、そろりと様子をうかがう。
騒音を作り出しているのは、今日転校してきた獄寺隼人だった。対象はダメツナで有名な沢田。いったい数時間の間に、この二人の間で何があったのだろうか。何か喧嘩にしては一方的すぎやしないか?

「――っ!、二倍ボムッ!!」
「う、ぅわぁああっ!?」

そして、そのボムはどこから出しているのだろうか?四次元ポケットでも使わないと、普通は不可能だろう。……突っ込み所がありすぎて追いつかないとは、こういうものだったらしい。

「これがレン兄が言っていだ青春゙かぁ…!」

違う。
澄織はとうとう思考することを放棄したのか、元々天然だったのか、青春に全てを繋げていた。
ドカンドカンと爆発する裏庭に、キラキラと輝いた視線を陰ながら送る少女。
その光景は端から見ると一言。

カオスだった。


*


あのあとは言わずもがな、綱吉が死ぬ気化して獄寺の命を救い、恩として忠犬になった獄寺が不良を倒していた。
……その間に、幾度か爆発音がしたのは、気のせいとして処理しておこう。無論、そこら辺に倒れている上級生たちもである。
おろおろしている綱吉に、自称最強の暗殺者はシニカルに笑いながら近寄る。己の見込みに、計画に抜かりはないという自身を感じられた。

「よかったなツナ、一人目のファミリーをゲットしたぞ」
「なにそのポ〇モンみたいな言い方ー! そして、俺はマフィアなんかにならないって言ってるだろ!!」
「十代目っ!心配は無用です!! 十代目の妨げになるものは、この俺が蹴散らしてやりますから!!」
「だーかーらーっ!獄寺くんもいいって!!」

息巻く獄寺を慌てたように抑える綱吉。
困ったような表情はしているが、どこか今までとは違う日常に喜んでいるような空気をしていた。ダメダメだった自分に何かが変わる――。期待と希望がそこにはあった。
獄寺は綱吉に止められて、渋々と言うように下がる。耳と尻尾が生えていたならば、恐らく元気なく垂れ下がっていたことだろう。
澄織といえば、綱吉が獄寺を救ったあたりから様子見に飽きて、別の場所へと移動していた。もちろん、リボーンなんぞに見つかるヘマはしていない。


かくして人知れず物語は進んでいた。





六話終わり



前頁:次頁

- 15 -
ページ:
top
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -