態度不遜 (2/3)
――**Side
ありえねぇ。
あんな奴が世界一のマフィアのボスになるなんて、ぜってーおかしい。
俺を拾って下さった九代目は、お心が広く、寛大で優しさがありながらも刺すような存在感を感じさせるお方だ。
間違っても、こいつがそれと同等の立場になるなんてありえねぇことだ。誰が見てもそうに決まってる。比べものにもなんねー存在だぜ。
十代目の候補者…、アレ一人しかいねぇのかよ……。ボンゴレはもう終わったかもしれないな。せっかく九代まで続けさせたのに残念な話だ。まぁ歴史あるマフィアがまた一つ終わったっつーヤツだな。
一般人に混じって生活していて、苦しい目には全然遭わずに、のうのうとボスになれはしねぇぜ。そもそもマフィア学校に通っていない時点で無理だろうしな。
…くそっ、わざわざイタリアから飛んできて、なんでこんなにムカつかなきゃいけねーんだよ…。理不尽すぎるだろ。
というか、これは後でリボーンさんに部下の話は断らなきゃいけねーな。
あんな奴の下につくなんて虫酸が走る。ダメダメだし柔いし。これじゃあ、いっそ俺が十代目になったほうがいいんじゃねーのか?
まぁ、冗談だけどな――。
――**Side End
*
「――転校生?」
「うん。さっき先生がそう言ってたから、信憑性は高いと思うよ」
大して仲がいいわけではないが悪いわけでもないクラスメイトの女子は、そう言って他の友人に話し掛けに行った。
ああいうのが情報の始まりを作る存在なのだろう。
通りでどこか教室が浮ついているはずだ、と澄織は一人納得した。
「おはよう!」
ちょうどその時、教師が教室に入ってきた。そして生徒たちが口を開く前に、続けて教師は言葉を紡ぐ。
隙を与えず、手間を掛けず、ベテランの業だ。
「みんな知ってると思うが、転校生がこのクラスに入ってくるぞ!…それじゃあ早速紹介だ。――おい、入ってこい!」
先生の声により、ガラリと教室のドアが開けて転校生が入室してきた。
それとともに女子は色めき立ち、男子は恨めしげに睨む。
――転校生は男子だった。
身長は平均的なものの、銀髪に緑色の瞳、という容姿がかなり彼を引き立たせている。少なくとも普通の容姿ではなかった。女子が騒ぐのも無理はないのだろう。
そんな周りの態度を慣れているのか、転校生は無愛想な顔で立っていた。
「――イタリアに留学していた転入生の獄寺隼人君だ」
しかも何故か、沢田綱吉を睨んで明白に殺気を出している。沢田はそれに気づいているのか、怯えたような表情をしていた。
澄織は頬杖をつきながら、人知れず行われているその光景を見ている。
一体沢田に何があるのだろうか。
「(そういえば髪の色が人兄に似てるなー、って危ないな……)」
小さくふるりと震えた。
本来ならば、零崎に殺気を向けることは死と同等だ。――昨日はまだ、別の対象にハッキリと向けていたので良かったが、今日は、ついでと言わんばかりにクラス全体にも微妙に殺気を向けているのだ。なにか恨みでもあるのだろうか。
――話は戻すが、死と同等、それは仇なす云々よりも、殺人衝動が起こるから。言わば条件反射のようなものである。
澄織が自制をしていなかったら、今頃教室の床はあっという間に血と内蔵の海になっていただろう。
「でっ!?」
ガンッと、叫び声と共に響く音。
澄織があれこれと思案している間に、件の転校生は自己紹介を終えるなり沢田綱吉の机を強く蹴ったらしい。
教室に入った瞬間から綱吉を睨んでいたためやはり、というところだ。
沢田にとっては、睨まれたり蹴られたりとかなりいい迷惑だろうが。
「(…でも最近は沢田君が面白いから退屈しないし、学校に通っているんだけどね)」
もちろんそんなことは、知らぬが仏である。
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