自由奔放な (3/3)
「おらおらァっ!もっと金を出せよ!!てめぇんトコは金を一杯持ってんだろぉ!!」
「で、でも……。これ以上小遣いは持っていな……うッ!!」
「だったら親の財布からパクってこいよ! もし出来なかったら…、分かってんだろーなァ!?」
……典型的すぎて、逆に突っ込みようが無い会話だった。
リンチに夢中になっているであろう彼らに、澄織はそろりと忍びより、後ろから話し掛ける。
「弱いものイジメは駄目ですよー」
「――!!」
案の定、彼らはビクリと肩を震わせて反応した。
そして後ろを振り返り、澄織を見るとたちまち安心したような空気を出す。
「ガキが何言ってんだぁ?」
「これはイジメじゃなくてお手伝いだよー」
「早くガキは家で寝てなさーい」
一気に調子づいて、げらげらと馬鹿笑いをし始めた。そんな様子に呆れ、何も言わない澄織のことを怯えていると勘違いしたのか、とうとう不良たちは金まで請求してくる。
「つうかお前も俺らの為に金だせよ」
いわゆる、死亡フラグが立った瞬間であった。
「じゃあ、あなたたちは、わたしの為に殺されて下さい」
澄織は懐に手を入れ、ゆるりと出したのは一振りのメス――『殉粋無苦』。
硝子で造られたように見えるそれは、決して簡単には割れない代物だ。
澄織にとってこれは、自分を具現化させたような武器だった。どこまでも澄んでいるように見えて、実際は深い闇を持っている。
――純粋なんて、名ばかりだ。
今まで容赦なく大量の血を吸ってきたそれは錆びを一つもつけることなく、不良たちに向かってキラリと光った。
「は、なんだ。そんなオモチャを向けられても、全然怖くねーよ!」
ハハハ、と再び笑い始めた彼らは、全く気づいていなかった。自分たちの最後が、もうすぐそこまで来ていることに。自分たちは、この目の前の少女によって殺されることに。
そして、例外はなく容赦もなく平等に死が彼らに振り下ろされる。
「――…零崎(オペ)を始めます」
程なくして、路上は不気味なまでの静寂に包まれた。
*
「ふー…。零崎終了だね」
結局のところ、澄織はカツアゲされていた少年まで殺した。
理由はない。
そもそも、殺人に理由なんてものは零崎に存在しないが。
理由なく殺す、故に彼らは殺人鬼なのである。
「おっこづかいー」
澄織はまるで子供のように無邪気に――実際に子供だが――自分の某放浪癖のある兄の真似をして死体から財布を抜き取って、その場からひっそりと退場した。
(臨時収入が入ったよ!)(え?もちろん剥ぎ取りだよ!)……………………
夢主の性格がわからない…。
子供らしく無邪気、かつ常識人って一体何なんだ。
と、自分に突っ込んでみる。
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