左足/01


クリスマスが近い。私は白い息を吐いて、ネズミやウサギの死骸が詰まった袋を引きずっていた。

私が半バンパイアになって約一年半が過ぎた。
精神年齢は考えたくないが、見た目はまだ十一、二歳だろう。いつになったら純化作用が訪れるのかと、戦々恐々とする日々だ。私はまだ自分の性別が男だということに、完全に慣れたわけではない。この身体が少年だからまだ良いが……、青年になったら、私はたぶん、卒倒しそうだ。

この一年の間に、私はだいぶクレプスリーへの憎しみを無くした。まず、私には長期的に人を嫌えるエネルギーがなかったし、そもそもクレプスリーが完全に悪いわけではないことを知っているからだ。簡単に言えば、「まぁ……なっちゃったものはもう仕方ないし、そろそろ諦めようか」といった心境になったのである。
そして、バンパイアの知識もかなり増えた。血を飲んでも安全な生き物と、そうでない生き物の区別。食べられる雑草と薬草の使用法。人間に見つからずに潜むやり方……などなど。かなりサバイバル方面に強くなり、おかげで無一文で山中にほうり出されても、なんとか生きていけるようになった。
ちなみに未だに人間の血は飲んだり、飲まなかったりと反抗を続けているが、以前よりかはずいぶんと頻度は増した。一ヶ月に五、六回程度だろう。それでもクレプスリーは不服なのか、隙を見つけては私の飲み物に忍ばせようとしていた。

あのシーバーから厳しく躾られていたクレプスリーだったから、てっきり私にも厳しくびしびし叩き込むのかと思っていたら、意外にも、授業はそれなりに優しかった。
もしかすると、私を無理やりにバンパイアにしたことに対して、負い目があるのかもしれない。――なんて冗談めかした仮定をときおり浮かべていたが、私のコップの中身を勝手に血に変えている姿を見ているかぎりでは、ほとんど当たってはいないだろう。
……おおかた厳しくするのが面倒だとか、そんな理由ではないだろうか。教育を厳しくするのにも、それなりの愛と情熱を必要とするのだから。
でもまぁ、クレプスリーとの仲はそれなりに良好なほうだと思う。少なくとも、原作のような関係に近いだろう。それが良いかどうかはさておき、毎日がすこし楽しくなったのは事実だ。

キャンプ場のトレーラーが見えてくると、そこにはレフティ(原作通りにレフティと勝手に呼んでいる)が立っていた。私は生臭い袋を抱えて、彼の元へと近づいた。

「おはよう。調子はどう?」
「…………」

レフティはお腹をさすった。彼が私の知らない文化出身でないかぎり、それは空腹を意味する。
私は死骸詰めの袋をレフティに差し出した。

「これで足りると思う?」
「…………」

首を軽く横に振られた。彼の文化〜以下省略で、ノーと言いたいのだろう。
私はげんなりと肩を落とした。冬場は動物がなかなか見つからないのだ。これで三往復目だったが、このままずっと終わらないような気がした。春まで労働? ありうるね。

落ち込む私を見てどう思ったのか、レフティは小さい身体を伸ばし、私の肩あたりを軽く叩いた。

「慰めてくれるのか……、ありがとう」

すこしだけだったが元気が出た。
私は死骸入りの袋をレフティに渡し、代わりに空の袋を受け取ると、また林へと向かうことにした。
とりあえず、これを最後にしよう。この収穫量がどうであったとしても、ひとまず熱い紅茶を飲みながら休憩したい。
ついでにスコーンもあれば最高なんだけどなぁと呟いてしまうあたり、私もいよいよ英国に染められているらしい。
生臭い匂いを漂わせながら、私はクスリと笑い、死骸探しをまた再開させた。


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