偽善者/11
過程はたいしたこともないので省略するが、そんなこんなでR・Vと面倒なことになってしまった。
いくら話の流れを知っているとしても、起こるべくことを全て防げるほどの超人的な力は私にはない。バンパイアといえども、元々は人間だったのだから当然だ。
詳しい結果としては、原作通り、R・Vはシルク・ド・フリークを訴えてやると言ってきたし、羊はお陀仏してしまった。私がちゃんと人間の血を飲んでいたため、彼(または彼女)がさっくりと苦しまずに逝けたことが、原作とのわずかな相違点だろう。
残念なことにそのおかげで、R・Vから激しく化け物扱いをされてしまったのだが。たしかに、子供が苦もなく羊の首をへし折っている姿を目撃したら喚き立てたくもなる。ある意味ではR・Vに同情したくなった瞬間だった。
それでも私にも大切な生活があるので、彼には厳しく釘を刺しておいた。要約すれば「チクってもいいけど、動物を大切にしすぎると君の両腕を失うよ?」的な、親切心あふれる未来予知アドバイスでもある。
私の意図が伝わったかどうかはともかく、R・Vは最後まで顔を青くさせてシルク・ド・フリークを訴えてやると主張していた。面倒な限りな話だが、これは団長に相談しなくてはならない事項である。私がキャンプ場へと戻り、かくかくしかじかと説明をすると、ミスター・トールは頷いて一言。
「未来をひけらかすことは感謝しないな」
とだけ言われた。私ごときがこの世に悪魔を解き放てられるわけがないと思いたいが、悲しいかな、この身体がミスター・タイニーの遺伝子を受け継いでいることは明らかなので、素直に頷いておいた。兄(仮)の言うことは聞いておいて損はないだろう。
「これからのことを、なにも準備しなくていいの?」
「運命や未来は起こるべくしてできている。下手に手出しをするべきではないな。たとえ、人が死のうともだ」
「……はい」
先回りに釘を刺されてしまった。先程のR・Vの気持ちがよくわかる。彼の両腕はともかく、サムの命くらいは救ってやりたかったのだが、団長にそう言われてはそれも難しくなってしまった。
さて、どうしたものか。
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