天秤/13


マダム・オクタがアニーを刺した。
なんてことだ。原作とまったく展開が違うじゃないか。
アニーが倒れて動揺するのは、両親だけではない。私だって、唯一可愛がっていた身内だったから、原作との差異と相まって、かなり動揺している。
そして嫌なことも起きた。ただしアニーが意識不明になったことで、両親から「お前が代わりに倒れればよかったのに」と言われたり、憎まれたことではない。あんなものは私にとって、二次的な被害にしかならない。――何よりも大きな被害は、私がバンパイアになる可能性がぐっと高まったことなのだ!
私が妹にずっと無関心だったら、または見捨てられるほど酷い人間だったらよかったのに。
原作のダレン少年のように、どうやら私も大切な人と自分の人生を天秤にかけなくてはならないらしい。

今から、私はラーテン・クレプスリーのいる場所へ向かう。
頑張って交渉はする。でも、きっと、私は人間を捨てることになるだろう。
悔しいが、仕方ない。私は結局、ダレン・シャンのオルタナティブだっただけなのだから。
……最後に、人間の私が言えることはひとつ。

“スティーブの奴、許さん!”

――<エレン・シャンの日記より抜粋>


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